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なっとく法律相談  2005年4月 4日 更新

仕方なく署名捺印した念書は有効?

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Q.

 恋人が、私所有の車で事故を起こしました。事故については警察にも届け、相手との示談も無事成立しました。
 ところが、父は、「これから2年間、会うことはもちろん、一切の連絡を取り合うことを禁じる」という内容の念書を作成し、謝罪に来た彼に署名捺印を迫ったのです。
 事故を起こして申し訳ないという気持ちと、その場を収める方便から、彼は仕方なく署名捺印してしまいました。
 私たちの意思とは無関係に、脅しの言葉巧みに作られた念書は有効でしょうか?

(20代:女性)

A.

 まず、本件念書が、「私たちの意思とは無関係に、脅しの言葉巧みに作られた」といえるかという点に問題があります。
 一般に、脅迫されるなど、意思を抑圧された状況下でなされた意思表示は取り消すことができる(民法96条1項)、とされています。また、薬物を飲まされたり、泥酔状態でした意思表示は、意思表示の前提となる意思能力が存在しないため、無効となります。
 しかし、今回のケースは、いずれの場合にもあたりません。「事故を起こして申し訳ないという気持ちと、その場を収める方便」とはいえ、彼は念書の内容を正確に把握したうえで、自分の意思で署名捺印しているからです。

 では、この念書は法的効力を有するといえるでしょうか。
 民法90条は、公の秩序又は善良の風俗に反する法律行為は無効である、と定めています。このような規定は、一般条項としての強い効力を持っています。
 しかし、条文の文言が抽象的であるため、どのような場合に適用されるのかは、条文の解釈と、事案の内容に左右される問題となるのです。その意味では、この念書が、端的に民法90条違反といえるかは微妙でしょう。
 ただ、人格の尊厳や自由を制限する契約については、個人の尊厳を最大限に尊重する憲法の理念にも反するものとして、――事案の具体的状況にもよりますが――公序良俗に反すると解釈しやすい、と思われます。

 今回の相談では、連絡を禁ずる期間が2年間と限られていること、交際を強制的に禁止する内容ではないこと、本人にも帰責事由があることなどを考えれば、契約自体が絶対に無効であるとは断言できません。
 しかし、あなた方二人は既に成人しておられ、法律上親権に服しているわけではありません。親との「契約」に縛られずとも、自らの責任で、自由な人生を選択すればよいのではないでしょうか。

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