トップページ > なっとく法律相談 > 自販機に詰まった紙幣。管理者の賠償範囲は?
なっとく法律相談 2005年5月 9日 更新
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店の前にタバコの自販機を置いています。
朝の7時すぎ、お客様が自販機に新1,000円札を入れ、詰まらせてしまいました(自販機に「新1,000円札は使えません」と表示してあります)。
お客様は自販機管理者の電話番号に連絡されたのですが、つながらず、私が9時前に店を開けるまで、会社を休んで自販機の前で待っておられました。
実際に1,000円札が詰まっていましたので、すぐにお返ししました。しかしお客様は、「管理者にすぐに連絡がとれなかったため、会社を休んで2時間も待たされた。だから自分の1日分の日当13,000円を払え」とおっしゃるのです。
お客様のいうとおり、1日分の日当を支払わなければならないのでしょうか?
(40代:女性)
売買契約は、一方の「売りたい」との意思表示(申し込み)と、一方の「買いたいから代金を支払う」との意思表示(承諾)が合致して、成立します(民法555条)。
対面による売買では、人と人との間で「申し込み」と「承諾」がなされるのですが、自動販売機では、このようなやり取りはありません。しかし、自動販売機を設置し、客が利用できる状態においていること自体が「申し込み」であり、客が金を投入する行為が「承諾」にあたる、と考えられます。
普通ならば、契約の成立後、当事者が互いの債務を履行することにより、債権は満足を得て、消滅します。売買の場合は、売り手は代金を得、買い手は商品を得て、契約は終了するのです。
では、今回の場合、契約は成立しているといえるでしょうか。
自動販売機を利用しようとした客は、「新1,000円紙幣の使用はできない」という、支払方法について店側が出した条件を無視して支払おうとしました。それが故意になされたのではなく、注意書きに気がつかなかったからだとしても、それは客の過失です。
すなわち、承諾そのものが有効になされていない、したがって契約はいまだ成立していない、といえます。
契約が成立していないとすれば、中に詰まった紙幣は、店側にとっては不当利得(契約の存在など金銭を受け取る正当な理由のない利得)となります。不当利得は「その利益の存する限度において」、相手方に返還しなくてはなりません(民法703条)。
つまり、あなたは詰まった1,000円紙幣の返還義務を負うだけであり、それ以上の損害を賠償する義務はまったくありません。
「新紙幣は利用できない」と自動販売機に明示している以上、店にしてみれば、「それを無視した客の行為によって自動販売機による販売行為を妨害された」とさえ、言えなくはないのです。投入されたのが紙幣でなく何かの異物だとしたら、それは歴とした(?)不法行為になるのですから。
契約が成立しているならば、当事者は、互いに契約が円滑に履行されるよう努める義務があります。使用できる紙幣が正しく投入されたのに商品が出てこない、という場合には、管理者、代理店には、速やかに事故処理にあたる義務があるといえるでしょう。
しかし、それにしても、24時間体制で返却に応じる義務はないと考えます。
集計期間: 2008年5月4日-5月10日
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