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なっとく法律相談  2005年10月31日 更新

犯人が逮捕され、警察から示談を勧められたが…

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Q.

 先日、エスカレーターに乗っていたとき、近くにいた男に精液をかけられました。すぐ警察に届けたところ、犯人が逮捕されたとの連絡を受けました。犯人は60件以上もの余罪があるそうです。
 刑事さんから「民事訴訟はやめて、示談という形でいいですか?」と聞かれたので、よく分からないまま「はい」と答えてしまいました。
 私としては、慰謝料と、スカートの購入代金、被害届等を記入する際の拘束時間、交通費等を請求したいのですが、可能でしょうか。

(20代:女性)

A.

 刑事事件が起きたとき、示談は、二つの場面で登場することがあります。
 一つは、加害者が、被害者に告訴を取下げてもらう目的で支払いを申し出る場面。もう一つは、示談金の支払いを申し出ることによって、公判における裁判官への心証を良くしようとする場面です。
 被害者との間で示談が成立したか、あるいは成立が見込まれるという事実は、被害者の感情が慰撫され、加害者の反省の意を象徴しており、量刑において考慮される要素となるからです。
 ご相談では、担当刑事が示談を勧めたかのように伺えますが、警察官が示談を勧めるということは、普通はありません。示談の取りまとめは、前述のような事情から、加害者の弁護人が進めようとするものであり、警察が口出しすることではないからです。まして、「民事訴訟はやめて、・・・」と言われたというのは疑問です。

 担当刑事がどのような意味合いで示談を勧めたのかは不明ですが、示談によらなくても、民事手続によって損害賠償を請求することは、もちろん可能です。訴訟を起こせば、慰謝料、スカートの代金、交通費等も認められるでしょう。
 しかし、一般的な傾向ですが、裁判所が相当と認定する金額は、不法行為の被害者が考える額よりは安いことが多いのです。裁判にかかる費用の方が高くついてしまうこともあります。

 それに比べると、告訴を取下げてもらうために犯人が支払う示談金の額は、犯罪の性質、犯人の社会的地位・経済力によって左右されるものの、比較的高額であるということができます。犯人は実刑を免れる(執行猶予付き判決となる)ために必死であり、特に社会的地位の高い人は、高額の示談金を払っても告訴を取下げてもらいたい、という強い気持ちがあります。
 しかし、どう頑張っても実刑を免れないような重大犯罪である場合には、そもそも犯人には示談金を支払うメリットがありません(もちろん、真に反省してお詫びのために是非払いたいという犯人なら別ですが)。また、経済力がない場合も、「無い袖は触れぬ」の喩えどおり、難しいでしょう。さらに、今回の事件では、他にも多くの被害者がいるということですから、犯人側としても、個々の被害者との示談交渉を予定していない可能性が強いと思われます。
 民事訴訟によって損害賠償を請求するとしても、刑事手続が済んだ後に行うのが通常です(消滅時効に注意する必要がありますが)。もう少し様子を見てから対応を決められては如何でしょうか。

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