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なっとく法律相談  2006年3月 6日 更新

10年以上前に貸したお金は返してもらえない?(時効の援用)

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Q.

 20代前半の頃、当時付き合っていた彼に24万円貸しました。「車のパーツを買いたい」ということだったのですが、彼はお金がなく、私が定期預金を解約して貸しました。
 その時は「給料が入ったら少しずつ返す」という約束だったのですが、その後1度も返済されぬまま、一方的に別れを告げられました。その後、彼はすぐに他の女性と結婚をしてしまいました。
 それから12年経過し、回収は諦めていたのですが、私も子供を3人抱え家計が大変なので、やはり返してもらいたいと思うようになりました。
 もう10年以上経っているので無理なのでしょうか。少しでも返してもらえる方法はないでしょうか?

(30代前半:女性)

A.

 「貸したお金を返してもらう権利」のように、「ある人にある行為をさせる権利」のことを債権といいます。
 「一般の債権は10年で消滅時効にかかる」(民法167条1項。他に、10年より短い時間の経過により消滅する債権もあります。)ということを知っている人は多いのですが、時効完成によって債権債務が消滅したことを、誰が誰に主張したらいいのかを知っている人は、案外少ないのではないでしょうか。この事例で説明しましょう。

 まず、時効はいつから進行を始めるのでしょうか。「10年たった」といっても、いつから10年たったのかが問題となりますが、消滅時効は、「権利を行使することができる時」から進行する(民法166条1項)とされています。一般的には、債権者が取立てできるときから進行すると考えていいでしょう。
 そうだとすれば、あなたの金銭債権は行使できるときから12年ほどたっているということなので、時効の完成により消滅してしまったとも思えます。

 しかし、民法は、「時効は、当事者が援用しなければ、裁判所がこれによって裁判をすることができない」とも定めています(民法145条)。この意味は、「10年たったら即、債権が消滅し、債務者は履行義務を免れることができる」というのではなく、「時効の援用(主張)によって直接に利益を得る者が時効が完成したことを主張しなければ、時効の効果は発生しない」ということなのです。
 本件でいえば、お金を借りた元彼が、時効の援用によって直接に利益を得る者、すなわち消滅時効により義務を免れる者にあたります。あなたの債権が消滅すれば、元彼はお金を返さなくてもよくなるからです。しかし、元彼がこの利益を享受するには、彼自身が、「おれの債務は時効で消滅した」という事実を主張しなければならないのです。すなわち、相手が時効を援用してくるまでは、債権者であるあなたの方から諦める必要はない、ということです。

 そして、元彼が、時効が完成していることを知らずに「もう少し待ってくれ」「分割して払う」等と言った場合には、後に時効が完成していることを知ったとしても、後の祭りで、改めて時効を援用することはできません。なぜなら、「もう少し待ってくれ」「分割して払う」という言葉は、「自分に債務がある」ことを承認していることになり、「時効を援用しない」という意思表示と取れるからです。
 そして、一旦時効を援用しないという意思表示をした以上、債権者は支払ってもらえるという期待を持ちますから、その言を取消して再び時効を援用することは信義則上許されないのです。

 大切なのは、電話でもメールでもいいですから、あなたの支払い請求に対して「待ってくれ」等と言った事実を記録しておくことです。そして、今度こそ、支払期限、支払方法、遅延利息等に関して、きちんと取り決めをしておきましょう。

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