トップページ > なっとく法律相談 > 万引きは途中で思い止まっても犯罪!?
なっとく法律相談 2006年5月23日 更新
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女房が万引きの容疑で逮捕されました。本人の話では、盗もうと思ったが、やはり思い直し、店外に出る前に品物を店内に置き、車で帰ったそうです。それを見ていた警備員がナンバーを警察に通報し、取調べを受けることになりました。
「持ち出さなくても万引きだ」と言われ、4時間にわたる取調べをうけて万引きを認めたそうです。後日、検察から呼び出しがあることも告げられました。
途中で私達の注意を思い返して思いとどまったのに、逮捕されるのは納得がいきません。この逮捕は適法なのでしょうか?
(50代:男性)
この問題は、「窃盗犯の既遂時期をどの時点で認めるか」という、大変難しい問題を含んでいます。相談文からは詳細が明らかでないので、本件逮捕が適法か否かをはっきり申し上げることはできませんが、法律上どんな点が問題となりうるのか、ご説明したいと思います。
まず、「店外に商品を持ち出さなかった」からといって、犯罪にならないとは限らないことに注意してください。いわゆる「万引き」は刑法上の窃盗罪(刑法235条)にあたり、本罪には未遂処罰規定が設けられているからです(243条)。
未遂とは、犯罪の実行行為に着手したが、結果が発生していない段階をさします。例えば、人を殺そうとして、ナイフを持って飛びかかった、という場面です。
この段階では、まだ「人の死」という結果は発生していません。しかし、「人を殺す」という殺人の実行行為は、すでに開始されています(これを「実行の着手がある」といいます)。そして、殺人罪には未遂処罰規定がおかれているので、このような未遂の段階でも逮捕されうるのです。
同様に、窃盗犯でも、実行の着手があるが結果が発生しない段階で、窃盗未遂罪という犯罪が成立することになります。
商品を店外に持ち出せば、その時点で既遂となることに争いはありません。しかし、未遂をどの時点で認めるか、また、既遂さえも、どの時点で認めてよいかについては争いがあり、具体的状況によって一様ではありません。
たとえば、よく挙げられる例として、宝石をポケットに入れる行為は、たとえそれが宝石店の店内で行われても既遂となる、というものがあります。それは、宝石のような小さなものをポケットに入れた行為は、それだけで、不当に他人の占有を排除して自分のものにしようとしたと評価できるからです。一方、大きな辞典を小脇に抱えただけでは、既遂を認定できないばかりか、実行の着手すらない(未遂にもならない)といえるかもしれません。本件でも、奥さんが盗もうとした商品が何で、それをどのような態様で占有したかが問題となりうるのです。
次に、一旦既遂が成立すれば、後から盗んだものを返しても、何の役にも立ちません。もちろん量刑事由として判断の対象とはなりますが、窃盗罪の成立自体が影響を受けることはありません。
さらに、犯行を目撃した警備員が通報し、後に警察官によって逮捕された場合、必ずしも違法な逮捕とはいえません。現行犯逮捕(刑事訴訟法213条)としては違法ですが、準現行犯逮捕(213条、212条2項)、緊急逮捕(210条)、通常逮捕(199条)としては、適法に行われた可能性があります。
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