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なっとく法律相談  2006年9月12日 更新

ペーパードライバーの事故も危険運転致死傷罪に含まれる?

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Q.

 近頃、重大事故を起こした者に「危険運転致死傷罪」が適用されることがある、と話題になっています。

 この罪にあたる行為のうち、「その進行を制御する技能を有しない」で、というのは、具体的にどのような場合をいうのでしょうか。極端にペーパードライバー暦が長かった人が必要に迫られてやむなく運転し、人身事故に至った場合は適用されるのでしょうか。

(40代:男性)

A.

 危険運転致死傷罪刑法208条の2)を主な内容とした刑法の一部を改正する法律が、平成13年12月5日に施行されました。

 本罪は、従来、業務上過失致死罪として処罰されてきた飲酒運転や著しい高速運転など基本的交通ルールを無視した運転により人を負傷死亡させた場合に、傷害刑法204条)、傷害致死205条)に準じた故意犯として処罰しようとするものです。

 刑も業務上過失致死傷より格段に重く、15年以下の懲役、死亡させた場合は1年以上の有期懲役となっています。

 具体的には、

  1. 飲酒や薬物を使用した状態での運転
  2. 進行を制御することが困難な高速度で、又はその進行を制御する技能を有しない状態での運転
  3. 幅寄せなどの妨害
  4. 信号無視

 以上の行為によって人を死傷させた場合が対象となります。ただし、本規定は四輪以上の自動車に適用され、大型であっても二輪車には適用されません。


 ところで、「その進行を制御する技能を有しない」行為の代表例として、無免許運転が挙げられることが多いようです。

 しかし、本罪が単なる過失犯ではなく、故意犯として規定されたことからも、形式的には無免許運転ではなくても、自動車を運転するという危険性の高い行為をする能力を持たないことを知りつつこれを行ったような場合も本条の対象になり得ると考えられます。

 そうだとすれば、ペーパードライバーが運転する行為も、それにより人を死傷させれば、本罪が適用される可能性が高いといえます。

 もちろん、罪刑法定主義の観点からは、刑罰の対象となる行為は一般人にも判断できるように規定されるべきです。

 しかし、想定される全ての行為を列挙することは、人の行為が複雑、多様化した現代においてはおよそ不可能であることから、このような表現になったものと思われます。


 ただ、警察庁によると、2005年に全国で摘発された人身事故約85万5千件のうち、同罪が適用されたのは0・03%でしかありません。

 その原因は、本罪が故意犯として規定されたことから、危険運転の故意(「故意に危険な運転をしたこと」を立証することに困難が伴うからであるといわれています。

 たとえば、飲酒運転の場合は、「酒を飲んで正常な運転ができないと認識したにもかかわらず、運転を継続した」ことが「危険運転の故意」であるとされています。

 しかし、被疑者が「酒は飲んだが運転には支障がないと思った」として故意を否認した場合、故意という内心の状態を立証するのは困難です。無免許運転でも、常日頃免許を持たないまま事故や違反を起こすこともなく運転していた場合は、危険運転の故意を否定する事情となりそうです。これらの場合には、別に危険な運転をした事実を証明する客観的証拠が必要となります。

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