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なっとく法律相談  2006年10月23日 更新

退職する際「機密保持契約書」にサインをする「義務」があるのか?

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Q.

 3年間勤めていた会社を自己都合で辞めることになりました。

 その際、「機密保持誓約書」なるものに署名、捺印するよう言われました。 誓約書の内容は、

  1. 就業中に取得した情報の一切を開示しません。
  2. 就業中に取得した情報を開示、漏洩、使用した場合 法的な責任が生じることを十分に理解し、会社が被った一切の損害を賠償いたします。

というものです。

 もちろん、情報を故意に漏洩するつもりは全くありませんが、「会社が被った一切の損害を賠償いたします」との条項に気軽に署名、捺印したくありません。

 総務からは「退職するのに必要だ」と言われているのですが、 本当にこのような「機密保持誓約書」にサインする必要があるのでしょうか?

(20代:女性)

A.

 個人情報保護法の施行にともない、企業等の保有する個人情報の取り扱いについて具体的な基準を示す経済産業省ガイドラインが制定されました。

 このガイドラインに対応するため、また個人情報漏洩事件の多発を受けて、多くの企業では機密保持契約書を作成し、従業員や退職する者にサインを求めるようになりました。

 この契約は、個人情報や内部機密を保持し開示しないことが内容となっている、守秘義務契約です。

 契約の主な内容は機密保持条項や損害賠償条項ですが、ご相談のように、契約を求められる者にとってはかなり重大な負担と感じられるものが多くなっています。


 この点、個人情報を預かっている者は、契約を締結しているいないにかかわらず、法律により当然に、機密保持義務および損害賠償義務を負っています。したがって、契約書にサインしたことにより、特にあなたの負担が重くなるわけではありません。

 次に、損害賠償額についていえば、たとえ「会社が被った一切の損害を賠償いたします」との記載があっても、会社が恣意に損害賠償額を決定できるわけではありません。

 なぜなら、あなたが情報を開示したことを理由として損害賠償を求めるためには、会社側が、あなたが情報を開示したという事実、会社に発生した損害、あなたの行為と損害の因果関係などを証明する責任があるのですが、この「損害」とは、判例上、あなたの情報開示という債務不履行、あるいは不法行為と相当因果関係にある損害に限られることになっているからです。

 また、情報開示事件における損害賠償義務の内容としては、漏洩事件に対応するためにかかった費用、情報が開示され損害を被った第三者に対する賠償金、開示者の信用が傷つけられたことにより発生した損害、逸失利益等が考えられますが、会社はこれらをさして「一切の損害」との表現をしていると解釈できます。およそ発生した損害の全てを無限定、無制限に賠償させるとの意思で記載されたものであるならば、そのような契約は公序良俗民法90条)に反し、無効です。

 したがって、契約書の文言にかかわらず、あなたの立場が不当に不利になることはないと考えられます。

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