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なっとく法律相談  2007年8月27日 更新

常勤監査役の職務不履行

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Q.

 私は常勤監査役を務めており(監査役数は3名で、定数ギリギリ)、主幹事証券会社・顧問弁護士等からは一定の評価を頂いています。しかし、最近、代表取締役(実質オーナー社長/株式取得割合約65%)から私の仕事内容を否定する発言がされるようになりました。取締役会等の会議でも非難は行われ、6月になってからは会議に出席できなくなり、監査業務が出来ない状況となりました。私は恐怖心から出社できなくなり、現在は引きこもっています。最初の頃は体調不良と会社に通知していましたが、最近は会社と連絡するのも怖くなり無断欠勤しています。
 先日、会社から「監査役としての職務不履行で訴える」と電話がありました。監査役が職務不履行で責任を問われることがあるのでしょうか?

(30代:男性)

A.

 監査役は会社の役員に該当し(会社法329条1項前段)、役員は会社に対して善管注意義務330条民644条)および忠実義務を負っています(355条)。そして、この義務に違反したとき、法は「任務を怠った」ものとして、損害賠償責任を負担させます(423条1項)。このことから、会社側のいう「職務不履行」とは任務懈怠を指しているものと考えられます。

 では、監査役に要求される義務とはどのようなものなのでしょうか?
 本来、会社業務の監督権限は株主にあります。しかし、能力・意思の点から、株主自身による監督は合理性・実効性に欠けます。また、取締役会も監督権限を有します(362条2項2号)。しかし、取締役同士の仲間意識から、監督機能を十分に果たしえないことがあります。そこで、法は監査役を設け、常時、取締役の職務執行全般の監査にあたらせることとしました(381条1項前段)。こうした経緯から、監査役には、他の役員と馴れ合うことなく、専門的かつ積極的な監査が期待されていると言えます。
 監査役会について、法は、半数以上を社外監査役とする3名以上の監査役全員で構成し、そのうちの1名は常勤監査役でなければならないとします(335条3項、390条1項、3項)。この制度の機能は、社外監査役の存在を背景に、複数の監査役の間で調査の分担を行なわせることにより監査の合理性と実効性を高める点にあります。
 以上から、監査役には、各自が独立した立場で監査を行い〔独任制(390条1項)〕、その結果および過程をお互いに情報交換し、適切な監査意見を形成していくことが求められていると言えます。また、そうであるからこそ、法は監査役に強力な権限・義務・身分保障を与えています〔たとえば、1.権限については(a)業務執行全般に渡る監査範囲(381条1項前段)、(b)調査権という積極的権限(381条)、(c)一定の場合の取締役会招集権(383条)、(d)必要に応じた監査役会の招集権(391条392条)、(e)取締役の行為差止請求権(385条)等、2.義務については(a)不正報告義務(382条384条後段)、(b)取締役会へ出席義務(383条1項)等、3.他の役員よりも厚い身分保障(343条4項、309条2項7号、345条1項)〕。

 では、あなたに任務懈怠はあったと言えるでしょうか?
 まず、取締役会・監査役会への出席は監査役の義務ですから、これらの会議に出席しないことは任務懈怠にあたります。また、常勤監査役には、常時会社に勤務して監査業務にあたることが期待されています。したがって、正当な理由を欠く無断欠勤も任務懈怠にあたります。さらに、「監査役業務ができない状況になった」とありますが、法が監査役に与えた権限・義務・身分保障の趣旨を考えれば、そのような状況を変えるために法定の権限を行使し、義務を履行することが法の期待に添う行動であると言えます。
 なお、任務懈怠責任は過失責任ですので、その成立には当該役員の過失が必要となります。これについて、取締役についての判例ではありますが、放任したことが重過失にあたるとした判例があります(東地判S53.8.24)。

 以上からすると、本件会社があなたに対して任務懈怠責任を追及することには十分な理由があるものと言わざるを得ません。

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