トップページ > なっとく法律相談 > 悪質な客の情報を公表しても大丈夫?
なっとく法律相談 2007年10月11日 更新
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焼肉店を経営しています。
先日、来店されたお客さんが、自分で肉を焦がされたのに、「食べられないからお金は払わない」と言い張ります。しかたなく警察を呼びましたが、お金は持っていたため、詐欺罪にはあたらないとして「民事不介入」。現在、裁判所から支払請求中です。
二度と来てほしくないので、入り口に住所氏名、その家族について、「無銭飲食をしたため、入店お断り」と張り紙をしたいのですが、大丈夫でしょうか?
飲食店なので、知らないうちに異物を入れられたりされるおそれもあり、ぜひそうして防御したいと思っています。よろしくお願いします。
(50代:男性)
本件では、客はお金を持っていたというのですから、いわゆる無銭飲食(詐欺罪、刑法246条)にはあたりません。しかし、言いがかりをつけて支払を拒む行為が、「強要罪」(刑法223条1項)にあたる可能性があります。
強要罪は、生命、身体、自由、名誉、もしくは財産に対し害を加える旨を告知して脅迫し、または暴行によって、人に義務のないことを行わせ、または権利の行使を妨害した場合に成立します。
代金の支払いを拒むことは、店主たるあなたに代金債権を放棄させることになるので、「人に義務のないことを行わせ」「権利の行使を妨害」する行為にあたります。
しかし、「生命、身体、自由、名誉もしくは財産に対して危害を加える旨を告知する」か、暴行を用いなければ、本罪は成立しません。
次に、客の行為は、「支払わない」と悶着を起こす態様によっては、威力業務妨害罪(刑法234条)にあたる可能性があります。威力とは、人の意思を制圧するに足る勢力を用いることで、暴行・脅迫に限らず、地位や権勢を利用する場合を含むとされています。
もちろん、刑法犯に該当しなくても、民事上の債務不履行、不法行為にあたることが考えられます。貴店が出された料理に問題がない場合には、客が債務不履行となりますし、他に不法行為が成立する可能性もあります。
しかし、問題は、このような事実を公にすることが許されるのか、ということです。
店頭に張り紙をして、「無銭飲食をした人です」と大書すれば、不特定多数の人々に、当人にとっては公表されたくない私的な事実を公表にすることになります。これは、プライバシー権の侵害にあたり、民事上の不法行為が成立します。
さらに、この行為は、当人の社会的評価を下げることになるかもしれません。これは、名誉権の侵害にあたり、民事上の不法行為が成立します。刑法上の名誉毀損罪(刑法230条1項)も成立することがあります。
また、住所まで添え書きすれば、客の個人情報を、本人の同意なく店が公開することにもなります。
では、客の行為が不法行為にあたることや、支払を受けられずに迷惑をかけられたことが事実であっても、公表してはいけないのでしょうか。
これについて、名誉毀損罪の場合は、厳格な要件の下で、事実であったことが証明されたときは許される(処罰されない)場合があります(刑法230条の2)。
しかし、プライバシー権の侵害が問題となる場合には、真実であったことを証明しても、責任は免れません。プライバシー権の性質上、真実であった場合の方が本人にとってはダメージが大きいので、真実であることが公表してもいい理由とはならないのです。
本件は、民事上の債権の行使として処理したほうが無難です。
客に対しては、次回来店されたときに入店をお断りするか(契約自由の原則から、飲食店であっても契約の相手を選ぶことができます)、あらかじめ文書で来店をお断りする方法をとればいかがでしょうか。
集計期間: 2008年5月4日-5月10日
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