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なっとく法律相談  2007年11月15日 更新

隣との境界塀が越境、賠償金を払わなければならないのか?

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Q.

 自宅を売却するため測量したところ、40年前にお隣と折半して建てた境界塀の中心線が、2cmほど隣家側にずれていることがわかりました。
 家の買主は、隣家とのトラブルを解決してほしいと言っています。隣は、塀を解体して新たに当方の負担で塀を建てるか、塀をそのままにして賠償金30万円を支払うかのどちらかを要求しています。
 そこまで負担しなければならないのでしょうか、お教え下さい。

(40代:女性)

A.

 民法に「時効」という制度があるのはご存知かと思います。時効には、「取得時効」(民法162条163条)と「消滅時効」(167条174条の2)があり、前者は一定の時間の経過によって権利が得られるというもの、後者は同じく時間の経過によって権利を失うというものです。
 消滅時効のほうは、「飲み屋の借金は1年で払わなくてよくなる」とか言われ、身近な出来事として話題に上ることがあります。しかし、取得時効は期間も長く規定されているため(10年または20年)、時効が完成しているのに気がつかず、せっかくの利益をフイにしている人も多いのかもしれません。
 この事例は、まさに、取得時効によって土地の所有権を取得した場合にあたります。

 40年前に隣家との境界を設置したとき、あなたは隣側に2センチ入り込んだ部分の土地を占有し始めたことになります。その部分は、その当時は隣家の所有物でした。
 しかし、善意者(他人の物だと知らなかった者)については10年で時効が完成するので、その後10年間、隣家に入り込んだ部分の土地を占有し続けたことによって、30年前に時効が完成しました。その部分は、30年前からあなたの所有物になっているのです。
 したがって、塀を解体して建てなおす義務も、賠償金30万円を支払う義務も、あなたにはありません。
 また、時効取得は「原始取得」といって、何の負担もないまっさらな権利が手に入ることになっていますから、お隣は、あなたの土地の買主に何かを請求することもできません。

 お隣は、初めの10年以内に気がついて時効の中断(147条)を行えば、土地の所有権を失うことはなかったのです。
 お気の毒ですが、「一定期間継続した事実状態を尊重して法的権利としての効力を認める」という時効制度の趣旨にぴったりの事件だということになります。

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