トップページ > なっとく法律相談 > 亡き夫が交わした贈与契約、撤回できない?
なっとく法律相談 2007年11月21日 更新
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知人夫婦が店を経営していましたが、ご主人が亡くなりました。ご主人は生前、店の従業員Aに対し、「自分達が辞めたらこの店をやる」と口約束していたそうです。書面などはありません。
ご主人が亡くなった後は奥さんが経営しているのですが、Aの態度がいきなり変わり、「早く辞めて店をよこせ」と圧力をかけてくるそうです。
奥さんとしては、夫が生前にAに対してした贈与契約を撤回し、店を渡さないようにしたいのです。しかし、民法550条の「書面によらない贈与契約」は当事者しか撤回できないみたいです。
妻は夫の相続人として贈与契約を撤回することはできないのでしょうか?
(20代:男性)
民法は、贈与に契約としての拘束力を認めています。そこで、相続人は、他の司法上の契約と同様に、死亡した本人の契約上の地位を承継し、贈与者としての契約責任、すなわち財産移転義務を負うことになります。
ただ、贈与契約は、無償で財産を与え、また与えられるというものですから、特に当事者の意思が尊重されなければなりません。そこで民法は、書面による贈与(550条本文)と履行が終了した場合(同条ただし書)を除いて、各当事者は贈与契約を自由に撤回することができると規定しています。
そうだとすると、契約を撤回しないまま贈与者が死亡した場合にはどう考えればいいのでしょうか。これは、「撤回しなかった」という本人の意思を尊重して、贈与の意思が継続していたもの考えるべきでしょう。したがって、やはり相続人は贈与者としての契約責任を承継し、贈与者に代わって財産移転義務を負うと考えられます。
しかし、この事案では、贈与者であるご主人は、「自分達がやめたらこの店をやる」といっていたといいます。これは、「夫婦が経営をやめたら」贈与契約を履行するという、条件付契約と考えられます。それならば、ご主人が亡くなった後奥さんが経営しているという事情の下では、まだ条件が成就していないため、履行期は到来していないということができます。したがって、奥さんは、店を明け渡す必要はありません。
また、奥さんとしては、夫が生前にAに対してした贈与契約を撤回し、店を渡さないようにしたいということです。しかし、ご主人が一人で贈与を決意したのなら、奥さんは当事者たる地位にないため、契約を撤回したり、取り消したりすることはできません。
ただ、ご主人の意思としては、Aを営業の後継者と認めたからこそ、店を与えようとしたのでしょう。そうだとすると、Aは、現経営者である奥さんに対し敬意を持って接し、営業にも協力するという契約上の義務を負っていると考えられます(負担付贈与、553条)。
負担付贈与では、受贈者も債務を履行しなければなりません。ところが、Aの態度はそれに相応しくないものですから、Aは債務不履行に陥っています(「忘恩行為を理由とする贈与の撤回」といわれる問題です)。
したがって、奥さんは、Aの債務不履行を理由として、贈与契約を解除できるということになります。
集計期間: 2008年8月31日-9月6日
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