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なっとく法律相談  2007年12月17日 更新

親戚より医療費の援助をお願いされていますが…

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Q.

 数年前に縁を切った親戚がいます。
 その人から、数日前、「身体の具合が悪い」と連絡がありました。本人はお金がなく、病院にも行けないとのことで、「お金がないなら、借金してでも援助しろ」と言っております。
 症状は相当が悪いみたいですが、こちらの家庭の事情もあり、援助することはできません。
 それで、仕方なく、電話も通じていることですし、自分で救急を呼ぶなり、病院に行くなりするように伝えました。
 もし、このまま親戚が亡くなってしまった場合、私は罪に問われたりするのでしょうか。

(20代:女性)

A.

 犯罪は、何らかの行為をすることによって成立するものとして、刑法では、原則として「○○した者は・・・に処する」という形式で規定されています。
 では、何もしないという「不作為」によっても、犯罪は成立するのでしょうか。これが「不真正不作為犯の成否」と呼ばれる問題です。

 たとえば、母親が授乳しなかったために、赤ちゃんが死んでしまった場合を考えてみます。この「授乳しない」という不作為は、殺人罪(注:保護責任者遺棄致死罪の場合もありますが、分かりやすく説明するため、ここでは殺人罪とします)にあたるでしょうか。
 殺人は、「人を殺す」という作為、例えば、首を絞めたり頭を殴ったりという積極的な行為によってなされるのが通常であり、刑法上も「人を殺した者は」(刑法199条)という規定ぶりになっています。
 しかし、「見殺しにした」という言葉もあるように、母親が授乳しなかったために赤ちゃんが死んだのは、まさに自ら手を下して殺したのと同じだ、ともいえるのではないでしょうか。このような場合に、刑法に「人を殺した者は」と規定されているからといって、母親が何ら罪に問われないのは不合理に思えます。
 しかし、むやみに不作為による犯罪を認めると、行動するかしないかを自分で決定する自由が束縛されることになります。「不作為が罰せられる」ということは、「何かをせよと強制される」ということでもあるからです。
 そこで、誰の、どのような不作為が罰せられるのか、明確にする必要がでてきます。

 この点については、「ある行為をすることができ、その義務があり、その行為をすれば結果が回避できたのに、あえてしなかった」という場合に、不作為が罰せられるとされています。
 上の例でいうと、母親は、「授乳することができ、乳児の保護者として授乳する義務があり、授乳すれば赤ちゃんは死なずにすんだのに、それが分かっていてあえて授乳しなかった」場合に、その不作為が処罰される、ということになります。
 したがって、例えば、近所のおばさんや出張中の父親が罪に問われることはありません。おばさんには、保護者としての法律上の義務がないし、遠く離れた場所にいる父親には赤ちゃんの面倒を見ることはできないからです(もっとも、育児を放棄して、あえて出張に出たような場合は別です)。

 本件では、相談者とAさんの法律的関係が明確ではありませんが、数年前に縁を切り(但し、法律上は親族関係を「切る」ことはできません)、交際もなかったことから、親族としての民法上の保護義務877条以下)はないと考えられます。また、金銭的援助は不可能であるという事情もあります。
 したがって、たとえAさんが死亡したとしても、相談者が罪に問われることはありません。

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