トップページ > なっとく法律相談 > 寮に届いた宅配便が盗まれた!責任は誰にある?
なっとく法律相談 2008年1月21日 更新
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宅配便で注文した商品が届かないため、宅配業者に問い合わせたところ、「受け取りのサインをもらっています」と言われました。
調べてみると、現在住んでいる会社の寮の管理人が受け取り、サインをした後、鍵の付いていない下駄箱に置いたようです。玄関は暗証番号になっていまして、寮生以外は入室できないため、寮生の一人が盗んだと思われます。
犯人が判れば良いのですが、判らなかった場合、誰に賠償を請求すれば良いのでしょうか。管理人にサインをさせた宅配業者?受け取った寮の管理人? それとも商品の販売者でしょうか? 宅配を送るについての条件は、宅配業者に何も指示していません。
(40代:男性)
本件で考えられる賠償請求の相手方としては、宅配業者、管理人(管理人を雇っている会社)、荷物を盗んだ犯人が考えられます。 そのうち、犯人に対する請求ができれば一番端的ですが、寮生の中から特定するのは現実には困難でしょう。
そこで、後の二者に請求できないかを検討します。
まず、「宅配便」は、宅配業者が送り主との間で締結する、一種の運送契約と考えられます。 運送契約については商法に規定があり、物や人を陸上または湖川、港湾において運送する契約とされています(商法569条参照)。
ただ、この法律が成立したのは明治時代のことであり、内容は現代における宅配便運送の実体にそぐわないところがあります。また、内容も運送業に特有の問題を解決するための規定が大半です。
そこで、本件については、宅配便契約(仮にこのように呼ぶことにします)の目的から、契約当事者たる宅配業者がどのような義務(債務)を負うのか、考える必要があります。それにより、宅配業者に損害賠償を求められるかどうかが決まります。
宅配便契約においては、宅配業者は荷送り主から預かった物品を、受取人に指定された者に配達する義務を負います。その義務を果たせば、債務不履行責任を問われることはありません(民法415条)。
では、受取人に配達するについて、必ず受取人本人に手渡さなければいけないのでしょうか。これについては、そこまでの義務はないと考えます。なぜなら、必ず受取人が在宅しているとは限らず、一方、宅配業者は大量の荷物を取り扱うので、受取人本人に手渡すことまでを厳格に要求すると宅配業者に酷だからです。
そこで、受け渡しの方法について別の取り決めがない限り、受取人の支配領域に届ければよい(例えば、留守番の人に渡すことで足りる)と考えます。玄関先に置いたり、近所の人に預けるのでは足りません。本人の同意があれば別ですが、そのような同意が得られることは現代では稀でしょう。
では、管理人に渡すことで、「契約の本旨に従った履行」(民法415条)をしたといえるでしょうか。この点については、人の出入りの激しいオフィスビルなどでは認められにくいものの、寮や寄宿舎などは住人の範囲が限られ、建物も居住を目的としていることから閉鎖的な空間といえるため、管理人に手渡すことも認められるでしょう。また、管理人に手渡すことが習慣となっているなら、もっと認められやすいでしょう。
以上から、宅配業者は通常責任を負わないと考えます。
次に、会社の寮の管理人の責任を考えます。
会社の寮は、性質上、居住者が会社に勤務する者に限られるため、勤務時間帯には不在者が多くなります。そこで、その管理人には、寮に居住する者の生活を一定の程度で補助することが求められます。例えば、留守中の宅配便や届け物を受け取ったり、伝言を聞いておくなどの行為です。
会社と管理人の契約内容にもよりますが、一般にこれを会社の寮の管理人の職務とみても不自然ではないでしょう。そうであれば、管理人は、受け取った届け物について、紛失したり盗まれたりしないように注意する義務や本人に確実に手渡す義務もあるはずです。
したがって、管理人には職務の履行について過失があると認められるため、損害賠償責任が生じることになります。
ただ、管理人は寮を管理する会社の履行補助者なので、最終的に損害賠償責任を負うのは、履行補助者を使っている当該会社ということになるでしょう。
集計期間: 2008年5月4日-5月10日