トップページ > なっとく法律相談 > 出産費用が申込後に値上げ!それって許されるの?
なっとく法律相談 2008年1月31日 更新
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妊娠8ヶ月の妊婦です。昨年8月、病院での初診時に、出産入院についてのパンフレットを渡されました。それには「パック料金45万円」と書いてあったので、診療内容を確認した後、口頭で「こちらで出産します」と助産師に伝えました。
9月の検診時、医師から再度「こちらで出産ですか」と聞かれたので、「そうです」と答えました。
11月中旬、病院のHPで「2008年4月より52万円に値上げ」と書いてあるのを見たのですが、11月の検診の時には何の説明もなく、待合室に置いてあるパンフレットも金額は45万円のままでした。
順調に行けば、値上がりになるという4月に出産することになるため、12月の検診時に担当医師に確認したところ、「そうみたいですねえ」「詳細については助産師から説明します」と言われました。助産師の説明では「特にサービスが変わるわけではないのですが料金値上げになります」ということです。
この値上げは正当なものなのでしょうか?
(30代:女性)
患者と病院・医師の関係は、従来とはずいぶん変化しましたが、契約関係においては、専門的知識に劣る患者側が一般的には依然不利な立場に立たされているといえます。医師や病院が「こうです」と宣言すれば、「そうなんですか」と従わざるを得ず、それが経済的負担を伴うこともあります。
しかし、患者と病院の間における「約束」も、診療契約およびその従たる契約であり、法律や条理の規律を受ける点で、他の契約関係と違いはありません。
有償契約(タダではなく、契約の過程・達成で金銭のやり取りがある契約)おいては、対価がいくらであるかかが最も重要といえます。
例えば、有償契約の代表といえる売買契約は、一方がある財産権を相手方に移転することを約束し、相手方がそれに代金を支払うことを約束する契約(民法555条)ですから、代金がいくらかが決まっていなければなりません。代金がいくらになるか分からないのでは、安心して契約することができないのです。
診療契約においても、提供される医療サービスの内容と、それに対して支払われる代金額は、契約の要素(重要な部分)となります。契約時に明らかにされていない点については、契約当事者の合理的な意思解釈により、決定することになります。
本件では、入院するまでに受ける診療が「パック料金」に組み込まれているのかどうか明らかではありませんが、たとい組み込まれていないとしても、入院契約が成立したのは昨年8月の初診時か、遅くても9月の検診時といえます。
入院は出産予定日の前になるとしても、入院によって契約が成立するのではなく、その前の「約する」行為(民法555条・559条参照)によって成立するからです。
そこで、病院としては、契約の際に、「もし出産が4月以降になった場合には、費用は52万円になる」と相手に告げて、その同意を得なければなりません。
本件では、契約成立の8月~9月当時にホームページに掲載されていたかどうか明らかではありませんが、代金額が契約の重要な要素であることを考えると、相手方には契約締結時までに値上げを知らせなければなりません。
契約締結後の代金の変動可能性についてホームページで周知する方法も許されないわけではありませんが、水道やガスの供給契約のような不特定多数者との契約ではなく、一対一の契約では、それでは足りません。
以上のように、入院契約は代金45万円で成立しており、不足分については病院が負担すべきと考えます。
集計期間: 2008年5月4日-5月10日