トップページ > なっとく法律相談 > 売掛金を相手の製品購入代金で相殺できる?
なっとく法律相談 2008年9月 8日 更新
トラックバック(0件) ブックマーク:
(0)
(0)
(0)
A社への売掛金が80万円あります。 しかしながら永らく、このお金が未回収となっていますが、A社は営業を続けています
このまま行っても支払いが滞るのは分かっているので、A社の取り扱っている製品を購入(100万円)しようと思います
この場合、こちらからの支払いを一方的に相殺できるのでしょうか。
また、A社が倒産した場合はどうでしょうか?
(50代:男性)
まず、A社が経営を持ち直し、倒産手続きを免れた場合はどうでしょうか。 この場合には、あなたが負担した100万円の商品購入による債務は、80万円の債権の担保の役割を果たすといえ、取引上有効ですし、法律上も通常通り対当額で相殺できます。
では、A社が倒産手続(破産・民事再生・会社更生手続)に移行した場合はどうでしょうか。 破産法は71条1項各号(民事再生法93条、会社更生法49条も同様)で債務者(破産者)の財産状況が悪化して、もはやすべての債権者に弁済が出来ない状況(危機時期)に陥った場合には、債権者は、危機時期であることを知って負担した債務について、一定の場合を除き(71条2項1号~3号)相殺することが出来ないと規定しています。
このように相殺が禁止される理由は、債務者の経済的窮境により実質的に価値の下落した債権を、額面価値の債務負担で相殺することが、相殺権の濫用と評価しうること、債務者が危機時期にある場合には債権者間の公平・平等が要請されるところ、その公平・平等が害されることにあるといわれています。
今回のような場面では、(1)支払不能又は支払停止後に、(2)債権者が相殺に供する目的で破産者の財産の処分を内容とする契約を結ぶなどして、債務を負担し、(3)債務を負担した当時、支払不能又は支払停止を債権者が知っており、(4)71条2項1号~3号の原因にあたらない場合には、相殺が禁止されます(71条1項2号、3号参照)。
まず、(1)支払不能、支払停止とは何でしょうか。
「支払不能」とは、金銭の調達ができず、債務の全部又は大部分について、一時的でなく弁済できない状態(2条11項参照)をいいます。
「支払停止」とは、上記の「支払不能」であることを債務者が外部に表明している状態をいいます。
今回のケースでは、A社は現在、債務の弁済が滞っているようなので、支払不能又は支払停止に該当する可能性は十分あるでしょう。
次に(2)の債権者の債務負担ですが、あなたは相殺目的でA社の製品を購入しようと思っているので認められるでしょう。
(3)あなたは既にA社の財産状況を知っているので、A社が支払不能・停止であれば、製品購入の際に「知っていた」という要件も満たします。
(4)の71条2項各号の原因もないと思われます。
以上から、A社が支払不能又は支払停止の状況にあれば、あなたの行為が相殺禁止に該当し、後にA社の破産手続きが開始された場合には、相殺が当初に遡って無効となります。
集計期間: 2008年11月23日-11月29日
![]() | Amazon法律学小辞典 |