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裁判員のための刑法入門 2009年3月13日 更新
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第5回目の今回は、「行為時の事情によって罪が成立しない場合」について説明します。
客観的には犯罪にあたる行為を行い、その結果が発生していても、罪が成立しない場合があります。典型例は、医師による手術やボクシングです。これらの行為は、人の生理的機能を害していますから、傷害罪に該当する行為といえますが、正当な業務として行われているため、罰せられないのです(正当行為)。同様の例として、刑事訴訟法に基づく逮捕(逮捕罪)や母体保護法に基づく人工妊娠中絶(堕胎罪)などがあります。
また、被害者の同意があった場合も罪が成立しないとされていますが、殺人については、仮に被害者の真意に基づく同意があったとしても、同意殺人罪が成立するため、まったく罪にならないということはありません。また、やくざの「指詰め」のように、被害者の同意があったとしても、その行為自体が公序良俗に反するような場合には、罪が成立するとされています。
このほかに「被害者の同意」が問題となるケースとして、心中と安楽死があります。
心中が事件となる事案には、(1)被告人も自殺を図ったが死にきれなかった場合と、(2)心中すると見せかけて被告人には死ぬ気がなかった場合(偽装心中)があります。(1)の場合には、被害者が本当に心中するつもりがあったのかが問われますが(特に被害者に子供が含まれている場合)、事情を勘案して比較的軽い刑となることが多いのに対し、(2)の場合には、被害者が被告人が一緒に死んでくれるものと信じ、心中に同意していたにすぎず、被告人に死ぬ気がなかったのであれば、同意殺人ではなく、単なる殺人であるとして、刑が重くなることが多いといえます。
安楽死については、東海大学病院安楽死事件とよばれる有名な事件があり、そこで示された基準が安楽死を認めうる基準とされています。すなわち、
の4つを満たした場合には、薬物等を利用して患者を死に至らしめる積極的安楽死も殺人罪や自殺幇助罪とならないとしています。ただし、現在までのところ、安楽死を理由として無罪となったケースは存在しません。
正当行為・被害者の同意のほかに、罪が成立しない場合として、(1)正当防衛が成立する場合、(2)緊急避難が成立する場合、(3)罪を犯す意思がなかった場合、(4)心神喪失の場合、(5)14歳未満の場合、があります。次回からそれぞれについて説明していきます。
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