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日本の弁護士制度 その1

1. はじめに

従来、日本の弁護士制度は、外国に比べて大きな三つの特徴をもっていると言われてきました。

第1に、弁護士になるのが極めて難しいことです。例えば、アメリカではロースクールを卒業後、各州の司法試験に合格すれば弁護士になれますし、その合格率は80%前後といわれている(ニューヨーク州の初回受験者)のに対し、日本の旧司法試験では、原則として1年で択一、論文、口述の三つの試験を一度にクリアしなければならず、しかも、合格率も平成の始め頃は約2%前後となっていました。

今年2年目の新司法試験になって、合格率は30%前後になるといわれていますが、法科大学院の入学段階で相当絞られていますので、難しさはそれ程変わりはないようです。

第2に、外国に比べて弁護士の数が少ないことです。司法改革の理念の下、序々に増えてきていますが、2005年段階で22,000人です。同時期、アメリカの弁護士人口は100万人をこえています。その他、主要な先進諸国では、ドイツが138,000人、イギリスが118,000人、フランスが43,000人となっています。

第3に、日本の場合、少ない弁護士が都会とその近辺に集中していることです。企業がそこに集中しているからです。関東、関西、中部地区で実に全体の約8割を占めます。これ以外の地方は全国あわせても2割しかいません。1番弁護士の少ない県が鳥取県で31人です。鳥取県の人口は61万人といわれています。


このような現状をふまえ、今回から何回かにわけて、日本の弁護士制度の問題点について考えて見ましょう。まず1回目は、「弁護士人口」です。

2. 日本の弁護士人口、法律事務所の数、市場規模

(1)日本の弁護士人口

1980年から2005年までの25年間、弁護士は以下のように増えてきました。

(日弁連「弁護士白書」2006年版から)

弁護士数弁護士数
1980年11,6801993年14,867
1981年11,9261994年15,151
1982年12,1591995年15,498
1983年12,4281996年15,900
1984年12,6391997年16,340
1985年12,8701998年16,767
1986年13,1241999年17,178
1987年13,3392000年18,290
1988年13,5842001年18,897
1989年13,8412002年19,561
1990年14,1042003年20,263
1991年14,3712004年21,174
1992年14,6542005年22,059

この間、自然増の他に、増加のきっかけとなる出来事が2回ありました。

1つは、それまでの司法試験があまりにも難しく、合格者の社会人としてのスタートが平均年齢で30歳を過ぎてしまっているという反省の下になされた法曹三者協議からでした。それまでの500人前後から1991年には合格者を600人、92年から700人、その後、1000人と増やしてきました。

もう1つは、1999年に始まり、現在も継続中の司法改革です。

「法の支配」を社会の隅々までゆきわたらせ、国民が必要とする法律家の数を質を維持しながら養成しようというまったく新しい理念に基づくものです。法科大学院と新しい司法試験制度により、2018年頃までに法曹人口を5万人にしようという目的の下に弁護士が増やされています。この改革の下、先頃発表された日弁連のシミュレーションでは、2020年頃には約55,000人、2040年頃には約10万人になると予測しています。

(2)法律事務所の数と規模

規 模事務所数規 模事務所数
1人事務所8,09221 ~30人事務所24
2人事務所1,66631 ~50人事務所7
3 ~5人事務所1,30051 ~100人事務所3
6 ~10人事務所324101人以上事務所6
11 ~20人事務所99合 計11,521

弁護士が1人しかいない事務所が実に全体の70%を占めます。弁護士が5人以下の事務所となると96%となります。日本の場合、いかに小規模事務所が多いかを示しています。これに対し、アメリカでは弁護士数が、3,000人を超える事務所も出現しています。

(3)弁護士業界の市場規模

(日弁連「自由と正義」Vol42.53及び「弁護士白書」のデータから)

1990年2000年2010年2020年
1人平均売上高3,060万円3,793万円(約4,700万円)(約5,800万円)
弁護士数14,104人18,290人<31,000人><55,000人>
市場規模4,316億円6,937億円(約1兆4500億円)(約3兆1900億円)

※<>は日弁連の予測 (  )内は筆者の推測

成熟した産業が多い日本の既存の産業の中で、弁護士業界の市場はこれから大きく伸びていく可能性の高い、極めて珍しい分野だといえます。

3. 諸外国との比較

まず、以下の表をご覧下さい。アメリカ、イギリス、ドイツ、フランスと比較した日本の弁護士1人あたりの国民数とGDP(国内総生産)のです(数字は2005年現在)。

国名弁護士数人口
(単位は
千人)
GDP
(億ドル)
弁護士1人
あたりの
国民数
弁護士1人
あたりのGDP
(1ドル=
110円で換算)
アメリカ1,038,000300,007124,388289人131,780万円
イギリス118,00060,27022,950510人213,620万円
ドイツ138,00082,42523,620597人188,100万円
フランス43,00060,42422,1621,402人565,620万円
日本22,000127,76749,9115,792人2,488,860万円

弁護士が法律上のトラブルを初めとする国民の法的問題の解決と企業の経済活動へのリーガルサービスをその仕事とするなら、弁護士の数がどの位必要かは、その国の人口と経済活動の規模によってある程度決まってくると思われます。詳しく見てみましょう。

アメリカは弁護士の数が突出しています。人口も3億を超え、GDPも世界一ではありますが、弁護士1人あたりの人口は289人と日本の1/20、GDPでは1人あたり13億1780万円で、これも日本の1/19の規模となっています。そのため、アメリカの弁護士事務所は海外に市場を求め、大規模事務所は世界の主要都市に支店を設け、世界戦略を展開しています。

イギリスは、ドイツよりも弁護士が少ないですが、人口も少ないため、弁護士1人あたりの国民数も510人とアメリカに次いで少なくなっています。植民地時代からのイギリスの伝統でしょうか、弁護士も小さな国内市場よりは、海外展開に力を置き、アメリカと並んで外国に多くの支店を設けています。

現にドイツでは、上位10事務所のうち、9つが英米系の事務所で占められています。

反面、ドイツでは弁護士数が多く、弁護士1人あたりのGDPもアメリカに次いで少ないようです。一部の弁護士は、弁護士の業務以外にサイドビジネスをもたないとやっていけないという現実もあります。

フランスは、先進諸国の中では弁護士数がもっとも少なく、弁護士1人あたりの国民数、GDPとの関係でももかなり余裕があるようです。現在日本で進行中の司法改革も2018年頃までにこのフランス並みの弁護士人口にすることを目指してしています。

4. 日本の場合

問題の日本ですが、現在弁護士1人あたりの国民数は5,792人、GDPは248億8860万円で実にアメリカの19倍と20倍になります。

日弁連は今のまま弁護士数を増やし、2010年からは毎年司法試験の合格者を3,000人とした場合、弁護士数は2020年頃には55,000人、2030年頃には79,000人になると予測していますが、それでもこの2030年になってようやく弁護士1人あたりの国民数が現在のフランス並(1,490人)になるようです。

もちろん、どのくらいの弁護士数が必要かは人口やGDPだけでなく、その国の国民の法(権利)意識や、法制度のあり方にもよりますので、一概には決められないかも知れません。

日本では、司法試験の合格者を増やしても、地方で相変わらず弁護士が不足しているのに、

都会では就職先のない弁護士が余っているという現象が起きています。また、弁護士が増えすぎると、弁護士業界で過当競争が起き、アメリカのように訴訟社会となり、濫訴が増えるという危惧もあります。従って、数さえ増やせば良いという問題ではないという意見もあります。

ただ、企業はグローバル競争に直面する中で、より良質で迅速なリーガルサービスを必要としているし、個人も法化社会の中で従来以上に自己責任が問われるような時代になりつつあるというのも確かです。


さて、あなたは日本の弁護士人口はどの位が適正と思いますか。

アンケートにお答えいただき、ご意見も積極的にお寄せ下さい。

弁護士人口について
  1. 現在(22,000人)より少ない人数でよい
  2. 現在の人数(22,000人)でよい
  3. 司法改革が目的としているフランス並み(43,000人)がよい
  4. 5万人以上10万人以下くらいがよい
  5. 10万人以上いた方がよい

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