サイト内検索:

公共の場所での喫煙を罰則をもって禁止することはどこまで許されるか

一、路上喫煙禁止条例

 街を歩いていると、喫煙者のタバコポイ捨てを目にすることがあります。路肩をみると、ポイ捨てされたタバコが散乱しています。このような光景を見て快く思う人はいないでしょう。
 もともと、タバコのポイ捨ては、喫煙者のマナーの問題とされていました。喫煙者のマナーが改善されれば、タバコのポイ捨てもなくなるであろうと考えられていました。しかし、依然としてタバコのポイ捨ては無くなりませんでした。
 そこで東京都千代田区は、全国に先駆けて路上喫煙禁止条例を制定し、2002年10月から施行しました。条例の内容は、灰皿の設置されている場所以外を終日禁煙とし、違反者から2000円の過料を徴収するというものです。同条例の実効性を確保するため、パトロール隊を出動させ、違反者からその場で過料を徴収することがなされています。その結果、路上喫煙禁止区域でのタバコのポイ捨てが激減したといわれています。
 この効果を見て、他の自治体も路上喫煙禁止条例を制定するようになりました。政令指定都市では、札幌市や名古屋市、広島市、福岡市などがそうです。これ以外の自治体でも、禁止条例を設けることを検討しています。今後も路上喫煙禁止地域は拡大していくと考えられます。

二、路上喫煙が禁止される理由

 路上での喫煙が禁止されるのは、タバコのポイ捨てをなくし環境の保全を図ることだけを目的としているわけではありません。人ごみの中で喫煙をすると、タバコの火で他の歩行者にやけどを負わせる危険性があります。歩行喫煙者が手に持っているタバコの高さは、子供の顔の高さと同じくらいになるため、特に、子供にとって、歩行喫煙者のタバコは脅威であるといえます。また、火のついたままのタバコをポイ捨てすると、飛び火して付近の住居や施設が火事になるという危険性もあります。

三、海外の禁煙対策

 海外では喫煙に対してどのような法規制がなされているのでしょうか。厳しい取り締まりで有名なシンガポールでは、路上でタバコのポイ捨てをすると厳しい罰金を課されます。同国では、室内飲食施設での喫煙も禁止され、違反者には罰金が課されます。ただ、路上には灰皿が設置されており、路上喫煙が全面的に禁止されているわけではありません。
 アメリカのニューヨーク州や香港などでも、多くの公共施設での喫煙が禁止・制限されていますが、シンガポールと同様、路上喫煙が全面的に禁止されているわけではありません。
 このように、海外では公共施設の禁煙化が進んでいる一方で、路上での喫煙が全面的に禁止されているわけではありません。

四、禁煙場所の拡大

 日本においても、諸外国と同様に、公共の場所での喫煙を禁止する措置がとられるようになってきています。
 平成15年5月1日に施行された健康増進法25条は、「学校、体育館、病院、劇場、観覧場、集会場、展示場、百貨店、事務所、官公庁施設、飲食店その他の多数の者が利用する施設を管理する者は、これらを利用する者について、受動喫煙(室内又はこれに準ずる環境において、他人のたばこの煙を吸わされることをいう。)を防止するために必要な措置を講ずるように努めなければならない」としています。これを受けて、多くの自治体では、受動喫煙を減少させるための対策をとるようになりました。例えば、関東私鉄10社はすべての駅での喫煙を禁止しています。名古屋市ではバス停での喫煙を禁止しています。また、多くの官公庁舎でも全面禁煙措置をとっています。
 今後も多くの公共の場所で、喫煙禁止措置がとられるようになると考えられます。

五、喫煙者・愛煙家への配慮

 喫煙禁止場所が拡大するにつれて、喫煙者・愛煙家は肩身の狭い思いをすることになるでしょう。昼食後喫煙して、気持ちを切り替える人や、お酒を飲みながら喫煙しリラックスした雰囲気で話し合うことで、信頼関係を築いている方がおられるのではないでしょうか。平成10年度の厚生省の調査によると、喫煙人口は約3363万人存在します。現在でも、その増減はあるにせよ、多くの喫煙者・愛煙家が存在すると思われます。喫煙の自由は憲法13条が保障する基本的人権の1つだとする考えもあります。路上喫煙禁止地域が拡大し、公共施設での喫煙が禁止されれば、喫煙者や愛煙家は自宅等でしか喫煙できなくなり、一日の大半を禁煙状態で過ごさざるを得なくなり、喫煙者・愛煙家の喫煙する自由が著しく制約されることになります。確かに、禁煙は世の中の流れですが、この点への配慮も少しは必要なのではないでしょうか。

 六、公共の場所での禁煙を罰則をもって禁止すべきでしょうか

 現在、条例で喫煙が禁止されているのは、一定地域の路上喫煙であり、公共の場所における喫煙ではありません。公共の場所での喫煙制限は、各自治体が健康増進法を受けて任意に実施しているものです。
 健康増進法によって公共の場所での喫煙行為に対し罰則を科して取り締まることができません(健康増進法36条以下)。罰則をもって取り締まるためには、条例によって喫煙を禁止する必要があります(地方自治法14条3項)。
 では、公共の場所において路上喫煙と同じく、罰則付きの条例で喫煙を禁止すべきなのでしょうか。
 確かに、マナーの悪い喫煙者がいることは事実です。しかし、喫煙者の中には、タバコのポイ捨てをしないように灰皿を携帯したり、人が多く集まる場所を避けて喫煙するなど、マナーを守って喫煙する者も存在するのです。マナーの悪い喫煙者を取り締まるために、マナーを守りながら喫煙している方まで含めて罰則をもって取り締まることが必要なのでしょうか。喫煙者のモラルに訴えかけることで解決する問題とはいえないのでしょうか。
 また、モラルではなく罰則付きの条例で喫煙を禁止すべきであると考えた場合、いかなる範囲で禁止すべきでしょうか。「公共の場所」といっても、病院や子供たちが遊ぶ公園から官公庁舎や人気の少ない広い駐車場まで、様々な場所があります。
 さらに、特定の公共場所のみ禁止すると考えた場合、どの場所を禁煙とすべきでどの場所を喫煙可能とすべきなのでしょうか。病院や公園、公共交通機関の駅・停留所など、人の多く集まる場所での喫煙のみを禁止すべきであるという考えもあるでしょう。受動喫煙の危険性がある飲食店など室内での喫煙も禁止すべきであるという意見もあるでしょう。その他、利用者の多い時間帯や場所だけ禁止するという考えもあります。

 さて、皆様はどのようにお考えになるでしょうか。アンケートにお答えいただき、皆様のご意見も積極的にお寄せ下さい。

  1. 禁煙はモラルの問題であり、罰則をもって禁煙を強制すべきでない。
  2. 人が集まる場所での禁煙を一律に罰則をもって強制すべきである。
  3. 人の集まる場所だけでなく、飲食店などの室内でも罰則をもって強制すべきである
  4. 人の集まる場所でも時間帯や場所を選び、罰則をもって強制すべきである

ページトップへ