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成年後見制度

 わが国で、急速に高齢化が進んでいることについては、今さら言うまでもないことでしょう。これにつれて、高齢による痴呆性の人、知的障害のある人、精神障害のある人などが増えています。

 こうした判断能力の不十分な人々は、財産管理や身上監護(介護、施設への入退所などの生活について配慮すること)についての契約や遺産分割などの法律行為を自分で行うことが困難であったり、悪徳商法などの被害にあうおそれがあります。

 そこで、このような判断能力の不十分な人々を保護し支援するのが新しい成年後見制度です。

 もちろん、これまでも、民法に禁治産および準禁治産の制度があり、知的障害のある人や精神障害のある人の財産保護が図られていました。

 しかし、この制度は、もともと、痴呆のお年寄りのような人は想定していなかったこともあり、次のような問題点が指摘されていました。

  1. 対象者の心神喪失及び心神耗弱という要件が重く厳格であるため、軽度の痴呆、精神障害には適用できないこと。
  2. 禁治産者の全ての法律行為が取消の対象となるので、日常生活に必要な範囲の法律行為を必要とする痴呆のお年寄りには利用しにくかったこと。
  3. 禁治産および準禁治産の宣告を受けると戸籍に記載されるため、関係者が制度の利用に抵抗を感じること。
  4. 保護者である後見人・保佐人を一人しか置けないことなどから、必ずしも適任者による保護や支援を受けられず、本人の保護体制が十分とはいえないこと。

 高齢化が進む現在においては、こうした問題は無視しえなくなり、寝たきりや痴呆のお年寄りの介護を家庭で十分行うことが困難になってきています。

 そこで、こうした状況を受け、自己決定の尊重の理念と本人の保護との調和を目的として、より柔軟かつ弾力的で利用しやすい制度を創ることを目的として、成年後見制度が設けられたのです。

概要

 成年後見制度を設けたことによる、法改正は次のとおりです。

1. 軽度の精神上の障害のある方にも対応した法定後見制度
従来の禁治産および準禁治産の制度を「後見」「保佐」「補助」の制度(法定後見制度といいます。)に改めました。「補助」の制度は、軽度の精神上の障害により、判断能力が不十分な方のために新設された制度であり、本人の意思を尊重しながら多様なニーズに対応できるように、本人の同意の下で特定の契約などの法律行為について「補助人」の支援を受けられることとしています。また、禁治産および準禁治産もそれぞれ「後見」および「保佐」と改められ、より使いやすくなります。
2. 適切な保護者の選任が可能
本人の保護体制を充実するために、家庭裁判所が事案に応じて適切な保護者(成年後見人・保佐人・補助人)を選べるようにしています。これに加え、保護者を複数選んだり、法人を選ぶことも可能となりました。また、成年後見監督人などが選任されることもあります。
3. 自己決定と本人の保護を重視した任意後見制度
本人が前もって代理人(任意後見人)に、自己の判断能力が不十分になった場合の財産管理、身上監護の事務について代理権を与える「任意後見契約」を公証人の作成する公正証書で結んでおくことができます。自分が年老いて痴呆になる前に、自分の財産の管理方法を決めておくことができるわけです。そして、家庭裁判所が選任する「任意後見監督人」の監督の下で任意後見人による保護を受けることを可能にする「任意後見制度」を創設しています。
4. 成年後見登記制度を新設
禁治産宣告などの戸籍への記載に代えて、成年後見人などの権限および任意後見契約の内容などを登記して公示する成年後見登記制度を新設しています。
5. 身寄りのない方の保護
身寄りがないなどの理由で、申立てをする人(※)がいない方々の保護を図るため、市町村長に法定後見(後見・保佐・補助)の開始の審判の申立権を与えています。
※ 申立てができるのは、本人、配偶者、四親等内の親族などです。

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