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裁判員のための一口判例解説 2010年6月18日 更新
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~大阪高裁平成9年9月25日判決~
警察が踏み込んでくる前に自主的に名乗り出れば、自首が成立して、刑が軽くなるんでしょ?そう思っていらっしゃるそこのあなた。
実は、自首は、逮捕前なら無条件に認められるものではないのです。
刑法は、「罪を犯した者が捜査機関に発覚する前に自首したときは、その刑を減軽することができる」と定めています(42条1項)。
「発覚する前」という要件が付いていますね。
この「発覚」とは、捜査機関がどれだけの情報を取得した段階を指すのでしょうか。
これは一般に、「犯罪事実と犯人の発覚」と考えられています。
犯罪事実と犯人の両方が発覚してしまった後では、いくら出頭しても自首とは認められないのです。
今回の事案では、こうした自首の要件、特に「犯人の発覚」とはどの時点を指すのかが、問題となりました。
被告人Xは、暴力団甲会の構成員です。
Xは同会の他の構成員と共謀し、以前、配下の者に同会初代組長を狙撃させた人物と目されていたAを公道上で射殺する事件を起こしました。
この殺人事件と、その際、けん銃2丁とその実弾8発を不法に所持していたという事実に関し、Xは、本件事件の8日後の平成8年9月3日、S署に出頭しました。
これと併行して捜査機関が把握していた状況は以下のとおりです。
まず、本件事件から2、3日の内に、同会関係者の中から容疑者を絞り込んでいき、若頭のE、若頭補佐のX・Fの3人に、犯人像と年齢的な一致を見出しました。
しかし、Eは身長が犯人像と合わず、容疑者から除外。
また、Fも事件の2日後の8月28日に事務所当番をしていて、その挙動に不審点がなかったことから、やはり容疑者から外されました。
これでXの容疑が濃厚になりましたが、捜査機関は引き続き同会に接触を続けることにしました。
そして同月30日頃、犯人を出頭させるとEから連絡が入ります。
さらに翌31日には、逃走中の本件犯人はXであるという匿名電話を受けました。
この時、捜査機関は、いよいよXが犯人だと確信したのですが、Xの顔写真が入手できず、面割ができていなかったため、逮捕状を請求していませんでした。
第1審は、Xの出頭以前に、合理的根拠に基づいて、Xを犯人と特定できていたと判断。
したがって、Xの出頭は捜査機関に「発覚する前」になされたものではなく、法律上の自首とはいえないと判示しました。
これに対し弁護側は、原判決には事実誤認や法令適用の誤りがあるとして控訴しました。
第2審の大阪高裁は、控訴を棄却しました。
X出頭時に、犯罪事実が既に明らかとなっていたことは争いがありません。
さらに、遅くとも同月31日の時点で、立場、年齢、背格好、匿名電話等の情報が揃っており、捜査機関が、合理的根拠をもってXを犯人と特定していたと認定したうえで、逮捕状を請求しなかったのは単に面割の問題に過ぎないと判断しました。
したがって、Xが出頭した9月3日の時点では既に犯罪事実・犯人の両方が「発覚」しており、Xは自首の要件を満たせていないため、自首不成立と考えました。
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