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使用者が年休を認めないことはできるのか?

2002年3月11日 掲載

Q.

 年次有給休暇が3日分あったので、有給休暇の申請を出したところ、「有給休暇は認められない」と言われました。このようなことは許されるのでしょうか?

A.

 労働基準法39条4項は、「使用者は、...有給休暇を労働者の請求する時季に与えなければならない」と定めています。年休の権利は、継続勤務と8割出勤という要件をみたせば、当然に発生していますから、ここでいう「請求」は休暇の「時季」の指定を意味します。労働者は保有する年休の範囲内で、具体的に始期と終期を指定して時季を指定すれば、これに対する使用者の承認は不要です。
 したがって、使用者が年休取得を認めないといっても、それは法的に意味はありませんから、労働者がこれを無視して休んだとしても、使用者はそれを欠勤として扱うことはできません。

 もっとも、従業員が一斉に年休を取ると事業が成り立たなくなるおそれがあります。そこで、労働基準法は「請求された時季に有給休暇を与えることが事業の正常な運営を妨げる場合においては、他の時季にこれを与えることができる」(39条4項但書)として、バランスをとっているのです。これを「時季変更権」といいます。

 使用者側が時季変更権を行使できる「事業の正常な運営を妨げる場合」とは、単に日常的に業務が忙しいとか慢性的に人手が足りないというだけでは足りず、事業の規模、内容、その労働者が担当する業務の内容、業務の繁閑、予定された年休の日数、他の労働者の休暇との調整など諸般の事情を総合判断する必要があります。このように考えないと、人手不足の職場ではおよそ年休が取れなくなってしまうからです。
 さらに、使用者は、労働者が指定した時季に年休がとれるように状況に応じた配慮をすることを求められます。すなわち、使用者は年休実現のために、いわゆる「配慮義務」を負い、この配慮を尽くさずに行った時季変更権の行使は無効となります。具体的には、代替要員を確保したり、勤務割を変更することなどがこれにあたるでしょう。

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