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[裁判員制度] 証拠調べ(2) -証拠申請-

 前回、証拠申請に対して、相手方が「同意」「不同意」などの意見を述べることを説明しましたが、これらの意見には、どのような意味があるのでしょうか。

 「同意」と「不同意」は、証拠書類(書証)の証拠申請の際に登場します。被害者や犯行目撃者の供述調書や、被告人の自白調書、実況見分調書や医師の診断書など、証拠書類として裁判所に提出される書類には様々なものがあります。
 これらの書類は主に捜査機関によって作成されます。書類という形でまとまっていると、話し手が理路整然と話していたようにみえます。しかし、被告人の立場に立って考えると、本当に被害者が書類に書かれていた通りに話をしていたのかどうか、断定的に語ったように書かれている部分が、実はあいまいな記憶に基づいているのではないか、など、その真偽を明らかにしないと、証拠として採用することに不安が残るともいえます。
 そこで、証拠書類については、それを証拠として採用してよいか、相手方の意見を求め、同意したものについてのみ、証拠とすることにしているのです。そして、不同意となった書類については、その話し手を証人として法廷に呼び出し、実際に質問をしてみることで、話している内容に矛盾がないか、記憶は確かなのか、といったことを確認していくことになります。

 例えば、「被告人が被害者を刺しているのを見ました」という供述調書を読めば、誰もが被告人が犯人であるかのように思ってしまいます。しかし、実際には「暗がりで身長170センチくらいの人影が被害者にぶつかるように近づき、女性はよろけて倒れた。人影はそのまま走り去っていった。顔は暗くてよく見えなかったが、眼鏡をかけていたように見えた。警察で写真を見せられたときに、眼鏡をかけた男性が2人いたが、どちらかといえば被告人だと思った」といった程度の記憶だったとしたら、どうでしょうか。この程度の記憶で被告人を犯人と決め付けることはできないでしょう。こうした部分を明らかにするために、書類の証拠申請を不同意にして、供述者を証人として呼び、直接話を聞く必要があるのです。

 裁判員が参加する裁判では、裁判員が膨大な書類を読み込むのは困難なことから、審理の対象を重要な争点に絞り、書類ではなく、直接証人から証言を聞く形の運用がなされるとみられています。ですので、裁判員に選ばれたとしても、書類に目を通すことは少ないと思いますが、書類に潜む危険性というものについては、心に留めておいていただければと思います。

Q&Aコーナー

Q 不同意とされた書類は、まったく証拠とすることができないのですか?
A 法律で一定の例外が認められています。例えば、供述者が供述後に死亡してしまったり、行方不明になってしまい、法廷に出てくることができないような場合には、例外的に証拠とすることができるとされています。また、法廷で証言した証人が矛盾した発言を以前にしていたような場合に、それを示すために供述調書を使うことができます(「弾劾(だんがい)証拠」といいます)。

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