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[裁判員制度] 証拠調べ(5) -誘導尋問-

 今回は証人尋問の続きです。証人尋問で禁止されている尋問方法がいくつかあります。

 

 威嚇的または侮辱的な尋問はわかりやすいのですが、意見を求める尋問、議論にわたる尋問も禁止されています。証人は自分が見聞きした事実について証言をするのであって、経験した事実に基づかない単なる意見を求めたり、事実を引き出そうとせずに一般的な議論をしようとすることは、証人尋問の趣旨に反するからです。

 

 そして、実務上問題となりやすいのは、誘導尋問です。

 誘導尋問とは、質問者が希望しまたは期待している答えを暗示する質問のことで、たとえば「被告人が被害者を殺すところを見ましたか」というものです。この質問のどこが誘導尋問なんだろうと思う人もいるかと思いますが、立派な誘導尋問です。
 証人が見たのは、「被告人が包丁で被害者を刺した」という事実にすぎず、(殺意を持って)殺したかどうかは見ただけでは判断できないはずです。質問者は、「被告人は殺意を持って被害者を包丁で刺し、殺害した」という答えを期待してこのような質問をしているのです。
 また、「私は被告人に殴られました」という証言に対して、「先ほどあなたは被告人に腹を殴られたということですが、被告人は左手で殴ったのですか右手で殴ったのですか」という質問をするのも誘導尋問です。証人は腹を殴られたとは一言も証言していませんが、それを前提にどちらの手で殴ったのかを質問しています。

 

 誘導尋問は、証人の証言を質問者に有利な方向に誘導していくことで、真実とは異なる証言を引き出す恐れがあるため、許されないとされていますが、ドラマのように頻繁に「異議あり!」と弁護人や検察官が叫ぶことはありません。誘導尋問であることが明らかで、裁判官にもそれがわかっているような場合には、異議を述べないことも多いといわれています。誘導しなければ証人が答えられないということは、それだけ状況が苦しいということを表しているからです。
 ただ、二番目の例は、証人が質問の中に「腹を殴られた」という前提が含まれていることに気付かずに次の質問に答えてしまい、混乱をきたす可能性があるため、異議を述べて、尋問を止める必要があります。

 

 また、反対尋問については、誘導尋問を行ってもよいとされています。これは、主尋問は請求側の尋問であり、通常、質問者と証人の間に良好な関係が築けているのに対し、反対尋問では、証人も非協力的であるため、ある程度の誘導を認めないと、効果的な反対尋問ができないからです。

Q&Aコーナー

Q 法律で証言が義務付けられているとはいえ、証人が証言しにくい場合もあると思うのですが、そのような場合に何か対応はしているのですか?
A 証人が被害者であったり、被告人が暴力団の組長の事件で組員が証人となる場合など、証人が証言しにくい状況が想定される場合、法律上、いくつかの対応を行うことができます。

 ひとつめは、被告人を退廷させることです。被告人に弁護人がいること、供述終了後に被告人を入廷させて、証言の要旨を告知し、証人尋問の機会を与える必要があります。また、傍聴人を退廷させることもできます。
 ふたつめは、被告人との間についたてを立てたり、証人を別室に呼び、ビデオカメラを通じて証言をしてもらうことで、直接被告人と接しない状態で証言をしてもらうことができます。

 他にも、証人の健康状態が悪いときなどには法廷外で証人尋問を行うこともあります。これも証人が証言しやすくするための制度といえます。
 

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