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[裁判員制度] 評議

 前回までで法廷での審理が終わり、いよいよ裁判官と裁判員による評議に入ります。この評議では、審理を通じてなされた検察側・弁護側の主張証拠調べの結果に基づいて、事実を認定し、被告人が有罪か無罪か、有罪だとしたらどんな刑にすべきかを決めていくことになります。

 ここで大事なことは、「事実の認定は、証拠による」(刑事訴訟法317条)ということです。世間の耳目を集めるような事件では、好むと好まざるとにかかわらず、様々な報道を目にすることになります。被告人や被害者の経歴や性格、被告人の近所の人や同僚のインタビューなどをテレビで見ることがあるかもしれません。
  しかし、たとえそうした報道の内容が真実であったとしても、それが証拠として法廷に出てこなかったのであれば、判断の基準からは取り除かなければなりません。
  「そんなことは無理だ」と思われるかもしれません。しかし、裁判員がたまたま報道を見たかどうかで判断が異なってしまうのであれば、被告人にとってたまったものではありません。被告人は報道の内容に対して反論することもできないのです。逆に、法廷に出てきた証拠のみに基づいて判断すればよい、他は見なくてよい、と思えば、気が楽になるのではないでしょうか。

 もうひとつ大事なことは、「疑わしきは被告人の利益に」ということです。「無罪推定の原則」ともよばれるもので、合理的な疑いをいれない程度の有罪の証明がなされない限り、被告人は無罪であるとされます。
  「シロ」であれば無罪、というのは当然として、「グレー」でも無罪、というのは納得がいかないという方もいるでしょう。しかし、もし「シロ」でなければ有罪ということになれば、被告人は自らの無実を自分自身で立証しなければならなくなり、立証に失敗すれば有罪ということになります。これでは、立証の上手・下手で有罪・無罪が決まってしまうことになります。
  そこで、被告人は原則として無罪としたうえで、検察官に有罪の立証をさせることにしているのです。この場合、検察官の立証が下手だと、真実は「クロ」の被告人が無罪となる可能性がありますが、被告人が受ける不利益(身柄拘束や社会的地位の低下)の大きさを考えると、やむをえないと考えるのです。

Q&Aコーナー

Q 評議で意見が一致しない場合はどうなりますか?
A 評議に加わる裁判員裁判官の意見が一致するまで議論を重ねるのが原則ですが、どうしても一致しないときは、多数決で決めることになります。ただし、過半数を獲得した側に裁判員・裁判官双方の少なくとも1人が賛成していなければなりません。つまり、裁判員5人が有罪、裁判員1人と裁判官3人が無罪との結論に達したときは、有罪の判決を下すことはできないということになります。

 また、量刑の判断で意見が3説以上に分かれたときは、被告人にとって最も不利な意見の数を順次利益な意見の数に加えて、裁判員と裁判官の双方を含む過半数に達した時点の意見となります。
  たとえば、裁判員2人が懲役20年、裁判員3人が懲役18年、裁判官1人が懲役15年、裁判官2人が懲役13年、裁判員1人が懲役10年という意見だった場合、まず、懲役20年の2人の意見を次に被告人にとって不利な懲役18年の意見の数に足します。この時点で過半数を獲得していますが、裁判官の意見を含んでいませんから、裁判官の意見を含み、被告人にとって次に被告人にとって不利な懲役15年が結論ということになります。

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