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[裁判員制度] 違法収集証拠の排除

 この連載の5回目で、捜査について取り上げましたが、その際に、対象者の意に反して身柄を拘束したり、プライバシーを侵害するような捜査については、原則として事前に裁判官の許可を得ることにして、人権が侵害されないようにしているという話をしました。

 あってはならないことですが、そのような法律の手続を踏まずに集められた証拠が裁判に提出された場合、どうなるのでしょうか。

 法律の手続を踏まずに集められた証拠のことを「違法収集証拠」といいます。令状を取らずになされる捜索・差押えによって収集された証拠が典型例ですが、盗聴やコンピュータシステムへの不正侵入によって収集された証拠なども違法収集証拠となります。

 違法収集証拠は、対象者に気づかれないうちに収集されることも多いため、有罪のための決定的な証拠となることも少なくありません。しかし、こうした「汚い」やり方で収集された証拠に基づいて、裁判所が有罪判決を下すとすると、裁判所に対する信頼も失われてしまいます。そこで、こうした違法収集証拠については、裁判上証拠として認めないとすることで、違法な証拠収集を抑止するとともに、司法に対する信頼性を維持しようとするのです。

 とはいえ、日本で違法収集証拠が排除された例はほとんどありません。というのも、違法に収集された証拠であっても、一律に証拠として認めないというわけではなく、違法の程度、違法な証拠収集が行われた状況、証拠の重要性、事件の重大性を勘案し、司法の廉潔性の信頼を揺るがすような重大な違法がある場合に限って、証拠として認めないという判断をしているからです。
  最高裁で認められた例としては、被疑者に逮捕状を提示せずに逮捕をした後に、つじつまを合わせるために警察官が逮捕状に虚偽の記載をし、法廷においても虚偽の供述をしたという事案で、違法な逮捕に引き続いてなされた尿検査の結果(覚せい剤の成分が検出された)を証拠として認めませんでした(最高裁平成15年2月14日)。

Q&Aコーナー

Q 「毒樹の果実」の理論とは何ですか?
A 「毒樹の果実」の理論とは、「毒樹は毒の実を結ぶ」という聖書の言葉を起源とする理論で、違法収集証拠から派生して得られた二次的な証拠も、証拠から排除されなければならないという理論です。例えば、拷問によって得られた供述に基づいて、適法に捜索が行われ、凶器が発見されたような場合がこれにあたります。拷問によって得られた供述そのものは、違法収集証拠として排除されますが、供述内容をもとに法律の手続きに従って行われた捜索の結果も排除できるのか、という問題です。
 上記の最高裁の事案は、尿検査の結果に基づいて、さらに捜索がなされ、被告人の住居から覚せい剤が発見され、覚せい剤所持の罪でも起訴されたという、まさに「毒樹の果実」の理論が問題となった事案なのですが、最高裁は、違法収集証拠と二次的証拠との関連性について検討し、両者の関連性が密接でないとして、証拠を排除しませんでした

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