サイト内検索:

[裁判員制度] 量刑について考える(1)

 裁判員に選ばれたときにおそらく一番悩むのが、量刑についてではないでしょうか。日本の法律は、選択できる刑の範囲が非常に広く、例えば殺人罪の場合、「死刑又は無期若しくは五年以上の懲役」となっています(刑法199条)。このため、仮に殺人罪で有罪の心証を得たとしても、その被告人に対してどのような刑を科すかで悩むことになります。

 今回から数回にわたって、この量刑の問題について考えてみたいと思います。まず、今回は量刑に関する基本的なルールからみていこうと思います。

 刑法の各条文に書かれている刑から重くなったり、軽くなったりすることを加重減軽といいます。加重減軽の項目は、大きく分けて、(1)再犯加重、(2)法律上の減軽、(3)併合罪の加重、(4)酌量減軽の4種類があり、複数の項目に該当する場合には、上記の順番で適用されます。

 再犯加重は、前回登場しました。第一の犯罪について懲役刑の執行を終わりもしくはその執行の免除を得た後、5年以内に更に第2の犯罪を犯し、有期懲役に処すべき場合には、刑が加重され、その罪について定めた懲役の長期の2倍を上限として刑が科されます。

 次の法律上の減軽は、犯人が自首したときや、犯罪の実行を自ら途中でやめたとき、心神耗弱状態だったときなどがこれにあたります。ただし、法律上の減軽事由の中にも2つあり、その事由が存在したときには必ず減軽される必要的減軽事由と、裁判所の判断で減軽することができるにすぎない裁量的減軽事由があります。上記の中では、心神耗弱が必要的減軽事由であり、他は裁量的減軽事由です。
  法律上の減軽事由は、複数に該当する場合であっても減軽は1回しかなされないというのが、判例の立場です。つまり、犯行を途中でやめて自首したときであっても、1回しか減軽されません。

 併合罪の加重とは、確定判決を受けていない2個以上の罪について、各犯罪について別々に刑を決めるのではなく、一括して刑を決めるもので、最も重い罪について定めた刑の長期にその2分の1を加えたものを長期とします。ただし、それぞれの罪について定めた刑の長期の合計を超えることはできず、死刑や無期懲役に処するときは、他の刑を科さないことになっています。

 最後の酌量減軽は、情状酌量ともいわれるもので、犯行の動機や手段、被害の程度、被害者等の心情、事件の社会的影響、被告人の生い立ちや性格、反省の有無などを考慮して減軽するかどうかを決めます。

 刑が減軽される場合は、以下の例によります。

  1. 死刑を減刑するときは、無期の懲役若しくは禁錮又は十年以上の懲役若しくは禁錮
  2. 無期の懲役又は禁錮を減軽するときは、七年以上の有期の懲役又は禁錮
  3. 有期の懲役又は禁錮を減軽するときは、その長期及び短期の二分の一

 以上をもとに、傷害致死の再犯で犯人が自首し、酌量減軽が認められるケースを考えてみましょう。傷害致死罪の法定刑は、3年以上の有期懲役です。上限が決められていないときは、20年が上限となります。
  まず、再犯加重で長期の2倍が上限となりますが、加重した場合の上限は30年となっているため、3年以上30年以下ということになります。
  次に、法律上の軽減事由として自首が認められると、長期及び短期の2分の1となるので、1年6月以上15年以下になります。
  ここで、酌量減軽が認められると、さらに長期及び短期の2分の1となるので、9月以上7年6月以下というのが、選択できる刑の範囲ということになります。

Q&Aコーナー

Q 懲役と禁錮の違いは何ですか?
A どちらも身体を拘束される点で共通しますが、懲役は刑務作業が課されられるのに対して、禁錮にはありません。ただし、禁錮刑の受刑者の多くは願い出により刑務作業を行うため、実質的な両者の差はあまりありません。
 歴史的には、政治犯や過失犯に禁錮刑が科され、道徳的に非難される罪を犯した者(破廉恥罪)に懲役刑が科されていましたが、現在ではそのような区別も薄くなっています。
 同じく身体を拘束される刑として、拘留があります。これは30日未満の身体の拘束で、禁錮刑と同じく刑務作業は課されません。

« 前科・前歴・累犯 | 目次 | 量刑について考える(2) »

ページトップへ