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ホステスを口説くためにした金銭贈与の約束、支払うべき?

~大審院昭和10年4月25日判決~

 仲良くなったホステスさんにいいところを見せたくて、お金をあげる約束をしてしまった。

 これは法的な「契約」なのか、そこまでの拘束力はない単なる「約束」なのか、どちらなのでしょう?
 前者なら、ホステスさんはお金を支払えと要求できます。
 後者なら、ホステスさんに支払を要求する権利までは認められません。

 では、さっそく過去の判例をみてみましょう。

 男性Y(被告)は、「カフェー丸玉」で女給X(原告)と親しくなりました。
 当時のカフェーは現在のバーのような酒場で、女給はそのホステスにあたります。
 Yは、Xの気をひくために、Xが将来独立して自活できるよう、資金400円(当時の小学校教員初任給の約8か月分)を贈ると約束しました。
 このときYは、次月末日から4か月にわたり、月100円ずつ分割払いするという書面も作成しています。

 ところが、結局Yはお金を渡さなかったため、XはYと贈与契約(民法549条)を交わしたことを理由に、400円の支払いと遅延損害金を求めてYを提訴しました。
 これに対し、Yは、契約の存在を否定。
 また、仮に贈与契約が成立していたとしても、その契約の目的は将来Xと情交を結ぶことだったのだから公序良俗違反であり、無効だと主張しました。
 (民法では、愛人契約など違法な目的で交わされた契約は、公の秩序や善良な風俗に反するものとして無効になると考えられています。90条

 しかし、1審・2審ともXの請求を認容したため、Yはこれを不服として上告しました。

 大審院は原審を破棄・差戻ししました。
 
 まず、XとYの関係について、YはXと昵懇の間柄にあったというけれど、実際のところはカフェーで比較的短期間(親しくなってから約束を交わすまで約3か月)、遊興した関係に過ぎず、他に深い縁故があるわけではないと認定しています。
 それならば、たとえYがこの環境で一時の興に乗じXの気をひこうと相当多額の金銭供与を承諾・約束しても、このことから直ちに、Xが裁判でお金を払うよう請求できる権利まで与える趣旨に出たと判断するべきではないと考えました。
 すなわち、この事情下でYが自ら進んでお金を渡した場合は、それを債務の弁済(X・Y間に契約が存在し、Yはその契約上の義務を果たした)と考えて良いものの、そうでないならば単なる約束の域を出ないため、X側から約束の履行を強要できるような権利はないというのです。
 X・Y間の約束は、以上のような「特殊な債務関係」として扱うのが相当で、原審のように民法上の贈与契約が成立するというためには、Yに贈与の意思があったことを示すような、格段の事由が必要だとの結論に至りました。

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