サイト内検索:

損害賠償額の算定基準はいつ?

~最高裁昭和37年11月16日判決~

 ものの価値は一定ではありません。
 時間の経過とともに下落するものもあれば、高騰するものもあります。
 たとえば土地などは、バブルなどの景況や、周辺開発などの環境変化に合わせて大きく値が変わります。

 では、土地を処分した当時と裁判の時点で地価が大きく異なる場合、その土地の価額はどちらに合わせて算定すればよいのでしょうか?

 
 X(原告)は、自分が所有していた40坪の土地Aを2万円でY(被告)に売却し、登記も移転しました。
 このときXとYは、当契約の3年経過後から1年以内に、XがAを買い戻せるという特約を付けました。

 当契約から3年10か月経過後、Xは、Y方に2万円を持参し、前述の特約によりAを買い戻す意思を示しましたが、Yはこれを拒否。
 怒ったXは所有権移転登記を求めて訴訟を起こし、1審で勝訴しました(不動産登記法60条)。

 しかし、Yは強硬手段に出ます。
 なんと、1審判決の出る数か月前、まだ審議段階にあるAを第三者Pに売却して、登記も移してしまったのです!

 これでもう土地Aを取得できなくなったXは、2審で損害賠償請求に主張を変え(民法415条)、「少なくとも1坪2万円」というAの時価評価を参考に、40坪×2万円の計80万円をYに請求することにしました。

 2審の鑑定によれば、X・Y間の売買契約当初に77万6910円だったAの価格は、2審の口頭弁論終結ころには108万7500円に膨れ上がっていました。
 2審は、Yが、AをPに処分した時点でその後の地価上昇を予見できたと認定し、Xの80万円の請求を正当と判断しました。

 これを不服としてYが上告しましたが、最高裁は上告を棄却しました。

 最高裁はまず、債権者Xが「債務者Yがもはや債務(XにAを買い戻させること)を履行できなくなった」として請求できる損害賠償額は、原則その「処分当時の目的物の時価」とすると示しました。

 しかし、本件のように、目的物であるAの価格がなお上昇中、というような特別事情がある場合なら話は別です。
 Yが債務を履行不能にした(AをPに売った)時点で、この特別事情を知っていた/知り得た場合は、Xの請求できる損害賠償額は、そこからさらに高騰した「現在の時価」になるとしました。

 なぜなら、Yの債務不履行がなければ、Xはその高騰した価格のAを現に保有できていたはずだからです。
 例外的に「XがAを入手していれば、きっと現在の時価まで上がる前に処分していた」と予想できる場合は、賠償額を「現在の時価」に合わせるべきではありませんが、こうした予想がたたない限りは、この高騰した「現在の時価」を算定基準とするのが適切と裁判所は考えました。

 なお、このとき、XがAを処分するであろうと予想できる必要はありません。
 別にXがAを処分して換金する予定がなくてもよいのです。

 以上の基準に照らして考えると、Aの地価高騰という事情があり、YはA処分時にこれを知り得たのだから、原判決の判断は正しいと結論付けました。

ページトップへ