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購入した土地でかつて殺人事件が!損害賠償を請求できる?

大阪高裁平成18年12月19日判決

 日頃の報道で殺人事件は頻繁に目にしているものの、その舞台となった土地を買うというのはなかなか勇気のいる話です。
 しかし、殺人事件をどう捉えるかは気持ちの問題。
 土地購入後にそこで殺人事件があったと知った場合、この土地には「隠れた瑕疵(普通に注意していたくらいではわからない欠陥。民法570条)」があったとして土地の売主に損害賠償を求めることはできるのでしょうか?

 平成8年、周辺に多数の住宅、小店舗が立ち並ぶ地区内にある土地の建物内から、胸を刺された女性の遺体が発見され、新聞でも報道されました。
上記建物は土地の3分の1を占めていましたが、平成16年に取り壊され、更地となった土地まるごと売りに出されます。

 同年、X(原告)は、この土地を等面積に分けた上で、各部分に各1棟の建売住宅を建設して販売しようと、本件土地をY(被告)から1503万1500円で買い受けました。
 その翌年、Xが出した建売住宅用地のチラシを見て、等分した土地の東側部分(殺人事件の起きた部分)の購入を決めた客がいたのですが、近所の人から例の殺人事件を聞き、購入をキャンセルすることに。
 Xはこの後、事実確認に赴いた警察署で、殺人事件の話が本当だということを初めて知ります。

 Xは、上記の客に西側部分の購入を勧めましたが、「隣の土地でも気持ちが悪い」といわれ売買契約は成立しませんでした。
 その後Xは、上記の売り方に加え、本件土地そのものを2500万円で売却することも希望し、広告で購入者を募りましたが、裁判当時は未だ売却できていない状態でした。

 Xは、本件土地には「隠れた瑕疵」があると主張して、Yに対し損害賠償を請求しました。
 1審は、このXの主張を認め、売買代金の5%相当額(75万1575円)を損害と認めてXの請求を一部認容しましたが、X・Y両者とも自己の敗訴部分を不服として控訴しました。

 大阪高裁も1審の判断を支持し、X・Yの各控訴を棄却しました。
 このとき裁判所は、売買当時、殺人事件のあった建物はすでになく、嫌悪すべき心理的欠陥の対象はもはや特定できない一空間内のものにすぎないとしたうえで、

  1. 女性が胸を刺されて殺害された事実は、病死、事故死、自殺に比べても残虐性が大きく、通常一般人の嫌悪の度合いも相当大きいと考えられる
  2. 当殺人事件は新聞でも報道されており、その事件の性質からして、約8年以上経過したのちも、周辺住民の記憶に少なからず残っていると推測される

現に、土地購入者が近隣住民から事情を聞き、気持ち悪がってその購入を見送っている以上、この土地の新たな入居者が「殺人があったところに住んでいる」との話題や指摘に絶えずさらされる可能性もある
との見解を示しました。
そして、以上の理由から、「『当土地に建てた建物は住み心地が悪く、居住に適さない』と感じることに合理性が認められる程度に、嫌悪すべき心理的欠陥がなお存在する」と、当土地の隠れた瑕疵を認めたのです。

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