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相手が小学生でも過失相殺できる?

最高裁昭和39年6月24日判決

 事故を起こしてしまった時に相手にも落ち度があれば、「過失相殺(民法722条2項)」を用いて相手の過失を賠償額に反映させることができます。

 大人同士ならばこの処理に何の疑問もありませんが、相手が責任能力(自分の不法行為に対する責任を判断できる能力)のない小学校低学年の児童だったとしたらどうでしょう?
果たして、過失相殺は認められるのでしょうか。

 生コンクリートの製造販売業者Y1社の従業員Y2は、コンクリート運搬用自動車を運転中、東方から時速25㎞で十字路に進入しました。
 その際、南進してきたA(当時8歳2か月)とB(当時8歳1か月)による2人乗り子供用自転車に自動車の右後側部を衝突させてしまい、A・Bが死亡するに至りました。

 Aの父母X1・X2とBの母X3(原告)は、

  • A・Bの逸失利益(Yによる不法行為がなければ本来得られたであろう利益)
  • Xらの支出した葬儀費用
  • Xらの精神的損害に関する損害賠償

をY1・Y2(被告)に請求しました。

 一方、Yらは2人乗りをしていたA・Bの過失と、Xらの監督義務の怠慢を主張しました。

 原審は、事故発生防止に必要な程度の減速走行義務に違反したY2の過失から、Xらの損害賠償請求を認容しましたが、賠償額については、A・Bの過失(自転車の2人乗り)分を考慮し、当初250万円弱とされていたA・Bそれぞれの逸失利益を、100万円に減額しました。

 これに対しXらは、過失相殺をするためには被害者に事理弁識能力(ものごとを判断する能力、民法7条)・責任能力の両方が必要だと主張。
本件のA・Bのように、これらの能力を備えていない場合には過失相殺すべきでないとして上告しました。
 ちなみに、一般的に事理弁識能力は10歳程度、責任能力は12歳程度で備わると考えられています。

 最高裁は上告を棄却しました。

 まず、過失相殺は、不法行為者に対して積極的に損害賠償責任を負わせる問題ではなく、「損害発生についてどれほど被害者の不注意を考慮するか」、「不法行為者が責任を負うべき損害賠償額はいくらか」という公平の見地に関わる問題であると示しました。

 そして、過失相殺で被害児童の過失を斟酌する場合、当児童に求められるのは事理弁識能力だけで、未成年者に不法行為責任を負わせる時のように、責任能力まで求める必要はないとしました。

 そのうえで、事故当時、満8歳余の普通健康体の男子であったA・Bは、当時すでに小学校2年生として、日頃学校や家庭で交通の危険を十分教え込まれており、交通の危険につき認識があったと認定。

 以上より、事理弁識能力のあったA・Bについて進んで過失を認定し、損害賠償額決定時にこれを斟酌したのは正当であると結論付けたのです。

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