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高低差がある2つの土地、土地の崩壊防止対策はどちらがとるべき?

大審院昭和12年11月19日判決

 隣の土地と自分の土地で高低差がある場合、何らかの要因で、高い方から低い方へ土が流れてしまうことがあります。
土地が崩壊して大きな被害が出る前に、危険を取り除きたいと考えるのは自然なことですが、問題はその対策にかかる費用等をどちらが負担するかです。
一体、裁判所はどのようなところを見て対策義務者を決めるのでしょうか?

 Aの宅地とBの畑は隣同士。
あるとき、Bが畑を水田に変え、Aの宅地との境界線を掘り下げたため、両土地は高さ約73cmの断崖で隔てられることになりました。

 その後、両土地の所有者が変わり、Aの宅地は家督相続したXに、Bの水田はYに、それぞれ譲り渡されました。

 また、土地境界の断崖にも変化が生じます。
Xの土地の土砂がYの水田に崩れ落ちて断崖が変形し、一部が傾斜になったり、下部が窪んで洞窟状になったりと、崩壊のおそれが出てきたのです。

 Xの宅地は地質が砂地であるうえに、境界線から約1.8mの位置に家屋がありました。
そのためXは、Xの宅地がYの水田内に自然崩壊する危険があるとして、Yに対し崩壊防止に必要な整備をするよう請求しました。

 裁判の結果は、1審・2審ともXの勝訴。
原審は、他人の所有物(Y所有の水田)により、所有権の根幹である「所有地の使用・収益・処分」を危険にさらされた所有者Xに、相手方Yへの危険予防請求を認めました。

 これに対しYは、直接の行為者(断崖を作成した者)ではない自分が危険予防設備を負担させられるのは納得いかないと上告しました。
また、Yが危険予防設備を負担することになれば、Xの損失の軽微さに比べてYの負担が過大になり、公序良俗に反するなどとも主張しました。
※公序良俗 =「公の秩序、善良な風俗」の略で、社会的・道徳的妥当性を指すことば。民法90条

 大審院は上告を棄却。

 まず、土地の所有権者は、所有権を侵害されたときはその侵害の排除を請求でき、また、所有権が侵害されそうなときはその危険の防止を請求できると示しました。

 これはYの立場から考えれば、所有する土地の現状によって、隣地所有者(X)の権利を侵害したり、侵害の危険を生じさせた土地所有者(Y)は、この侵害の除去または侵害の危険防止に努める義務があるということになります。

 この義務は侵害等の原因が自分の行為であるか否かに関係なく課されるもので、故意・過失の有無も問題にはなりません。
例外的に義務を免れるのは、不可抗力の場合と、被害者自らにこの侵害を認容すべき義務がある場合だけです。

 加えて、大審院はXの宅地崩壊がもたらす損害は極めて重大と判断しています。
したがって、このような重大な危険に関してYに予防設備を命じることは相当であって、Yに過大の負担を課すものとはいえないと結論付けました。

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  • 民事判例解説高低差がある2つの土地、土地の崩壊防止対策はどちらがとるべき?

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