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不貞妻が夫にムリヤリ約束させられた慰謝料支払等は無効?

仙台地裁平成21年2月26日判決

 妻の不貞行為が原因で離婚したカップルが交わした「財産分与合意書」と「慰謝料支払約束書」。
これが夫の暴力によって無理矢理書かされたものだった場合、効力はあるのでしょうか?

 外国人男性Xと日本人女性Yは子供3人をもうけた夫婦でしたが、平成17年8月18日離婚しました。

 Xは元来感情の起伏が激しく、怒りの感情を自制できない傾向にありました。
また、家事育児一切をYに押し付けた上、重ねて仕事も強要するなど、身勝手な行動が目立ちました。

 そんな中、YはXの友人Aに相談を重ね、交際するようになります(平成17年3月)。
これに怒ったXはAを呼び出して金属バットで殴る蹴るの暴行を加え、傷害罪の現行犯で逮捕されました。

 一方でYは、Xの勾留中、親身になってくれた別の男性と性的関係を持ちました。

 この事件以来Xは、Yに対する不信感を強め、Yを一方的に問い詰めて暴力を振るうようになりました。

 同年8月、2人は離婚を決意。
Xは、自分を子供達の親権者とし、離婚届を提出しました。
その後もXのYに対する詰問・暴力は止まず、男性関係を問い詰めては、罵倒したり、激しい暴力(殴る蹴る、髪を掴んで振り回す、頭や顔を殴る、床にたたきつけるなど)を振るう日々が続きました。

 そんな中、XはYに自分の指示通りの「財産分与合意書」を作成するよう要求します。
その中身は、

  • 子ども3人をXに渡す
  • 家庭崩壊の責任はYの浮気にある
  • 居宅の売却代金全てと、所有する土地・建物の権利をXに渡す

というものでした。

 翌年2月、XはYを階段から突き落とすなど、より激しい暴行をYに加えました。
ついには無理矢理の性交などYの人格を無視する行為にも及んだうえ、子ども3人のうち2人分の養育費2000万円の支払いを要求しました。
Yは恐怖心からXの要求に従い、「慰謝料等支払約束書」を作成して署名押印します。

 その内容は、

  • Yが昨年の3~7月に2人の男性と浮気をし、家族を欺き捨てようとした
  • Xと子どもを苦しめ、家庭を崩壊させたうえ、Xの経営する会社にも大きな損害をもたらした
  • これらの責任として、Yが10日以内に2000万円を支払う

というものです。

 最終的にYは女性センターに保護されましたが、Xは財産分与合意書に基づく不動産の所有権移転登記手続と、慰謝料等支払約束書に基づく2000万円の支払等を求めて提訴しました。

 Yは上記合意を「自由意思に基づかない無効なもの」であり、そうでなくとも、当意思表示は原告の強迫によるものだから取り消せる(民法96条1項)としました。

 一方のXは、Yに対する暴力は1回きりで、両文書は二人の冷静な話し合いの結果作成されたものと主張しています。

 これに対し仙台地裁は、いずれの文書も無効であると結論付けました。
上記2つの文書の作成過程につき、XがYの不貞行為を責める態度に終始し、暴力を繰り返して、Yを自己のコントロール下に置いたことで、Yに指図通りの内容を書かせたものと認定しました。
したがって、これらの文書に記されたYの意思表示は「Yの自由意思によるもの」とはいえず、意思表示としての効力がないと判断したのです。

credit:Domestic Violence is Funny / Phanatic

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