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和解による解決VS錯誤による無効、どっちが優先?

最高裁昭和33年6月14日判決

 トラブルの相手方と和解したあとで、合意内容の欠陥に気づいたら...このままこの内容で決着するのは悔しいですよね。
当然「こんな不利な条件だと思わなかった。勘違いで合意したんだからあの和解は無効だ」と言いたい!

 しかし、和解(民法695条)は、互いに譲歩して「争いをやめる」ために行うものです。
いったん和解によって権利関係を決定した以上は、後になってそれが真実の権利関係と異なると判明しても、基本的に争いを蒸し返すことはできません(和解の確定効同696条)。

 はたして、こんな性質を持つ「和解」に、錯誤による無効の主張は通用するのでしょうか?

 卸売業者XはYに対し、水飴の売却代金や商品返品による返金など、合計62万円余りの支払を求めて訴えを提起しました。
Yが自分に支払義務があることを認めたため、両者は

  • 40万円 → Xが仮差押えをしていたY所有の「特選金菊印苺ジャム」150箱(45万円相当)をそのままXに譲渡し、XがYに差額5万円を支払うことで捻出
  • 残りの22万円余り → 支払免除

 という内容で裁判上の和解に至りました。

 ところが、この「特選金菊印苺ジャム」に問題があったのです。
当ジャムは当時市価1缶80~85円程度のものでしたが、実際に差押さえられていたジャムは、リンゴやアンズが大部分を占め、苺はわずか1、2割という粗悪品。
到底「特選金菊印苺ジャム」として通用する品物ではなく、1缶38円程度のものでした。

 そこでXは、錯誤による和解の無効を主張して上記代金等の支払を請求し、1・2審ともこれを容認しました。

 これに対しYは、「和解の確定効」は錯誤無効(民法同95条)に優先するなどと主張して上告します。

 最高裁は上告を棄却。

 そもそも、和解の確定効とは、和解の「争いの目的」に対して生じるものです。
本件の場合、争いの目的は「Yの支払義務の有無」なので、和解の確定効によって縛られるのも、この「支払義務の有無」に限られます。

 ですから、これから外れる「支払金額」については、再度争って構わないのです。

 ここからはもう普通の契約取消と同じで、X・Y間の合意の重要部分に勘違いがあれば錯誤無効を主張できます。

 X・Yのジャム譲渡の合意は、Yのジャムが1箱3000円(1缶平均62円50銭相当)の特選金菊印苺ジャムであることを前提として交わされたものでしたが、実はそれが粗悪品だったというのですから、「意思表示の重要部分に錯誤があった」と認められます。

 最高裁は以上のように説明し、Xの錯誤無効主張を認容した原審判断を支持しました。

credit:Tambako the Jaguar via photopin cc

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