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嫌悪の感情を理由に夫との同居を拒否できる?

東京高裁平成12年5月22日決定

 性格の不一致、相手の浮気、暴力に金銭トラブル...夫婦が別居する理由はさまざまです。
どんなにささいな理由でも、意見が一致していれば別居に支障はありません。
しかし、一方が別居を、もう一方が同居を望んでいる夫婦の場合、法的にはどのような理由があれば別居が認められるのでしょうか。

 夫Xと妻Yは、1988年に婚姻し、翌年、長女Aをもうけました。
XとYは、1997年までは特に大きな問題もなく、Xの住所地で同居していたのですが、次第にYがXに対する嫌悪を募らせていきます。
理由は、

  • 時と場合を考えないで発言する
  • Yの友人関係にまで干渉する

といったXの言動でした。

 YはXの世話を拒んだうえ、会話もしなくなり、別居や家出をほのめかすようになりました。
Xは、わがままで自己中心的なYに不満を抱きましたが、家庭崩壊を防ぐため、苦情や不満が出される度に、Yに旅行や帰省をさせるなどしてなだめていました。

 また、Yは、1998年に2回家出をし、このうちの1回では、XがYに「同居を継続する条件」として300万円を渡し、帰宅させています。

 1999年、YはAを連れてXの住所地から徒歩10分程のアパートに転居し、以後Xとの別居生活を始めました。
XはYに「生活費」として最初の3、4か月は月19万円、それ以降は月10万円を送金しているほか、Yの求めに応じて追加の5万円を渡したこともありました。

 XはY・Aに対し同居審判を申立てましたが、原審がこれを却下したため、Xが即時抗告しました。

 東京高裁は原審判を取消し、Xの抗告を認容しました。

 「夫婦は同居し、互いに協力し扶助しなければならない」とする民法752条から、同居を「夫婦の共同生活における本質的な義務」と位置付け、夫婦関係の実を挙げるために不可欠なものと考えました。
そのため、同居を拒否する正当な理由がない限り、夫婦の一方は他方に対し、同居の審判を求めることができるという基準を提示します。

 まず、Xの言動に嫌悪し、同居の意思を失ったというYの言い分から、高裁は、Xには自己反省とYの心情を理解しようとする姿勢が欠けていたと分析。
これが家出や別居につながったとYに一定の理解を示しました。

 しかし、Xに暴力等の非行は全くなく、Yが嫌悪するXの身勝手な言動というのも抽象的です。
Yが具体的エピソードとして挙げた話も、Xの是正が見込めるものばかりで、夫婦関係に深刻な影響があるとは思えませんでした。

 また、Xは、旅行や帰省に関するYの希望を聞き入れたり、生活費を送金したりと、自分なりに家庭維持の努力を続けています。

 さらに、Yは長女Aが高圧的なXを嫌っていると主張しましたが、この手の話も通常の親子関係なら珍しくないため、正当な理由にはなり得ませんでした。

 Yも離婚する気はなく、比較的別居期間も短い現在の段階では、X・Yの関係は回復の余地があると判断。
高裁は、「Xがつくった原因以上に、夫婦は互いに協力し扶助するという姿勢を放棄し、自分本位に振る舞ってきたYの態度が今日の事態を招いた」と指摘し、Yは同居に応じるべきと結論付けました。

credit:Pareja (Couple) / Daquella manera

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