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元々の建物と、賃借人が増築した部分との関係は?

~最高裁昭和44年7月25日判決~

 賃借人が借りた物件を自分の気に入るように加工した場合、この加工部分はどう扱うのが妥当だと思いますか?

 民法242条によると、勝手に加工した部分は元の不動産の一部と考えるのが基本です。
これを「付合」といいます。
ただし、一定の権利(たとえば、その建物に対する賃借権など)に基づいて加工を行ったのであれば、加工部分の権利はそれを施した本人に認められます(同条但書)。

 では、賃貸の土地に建つ建物に、増築部分が加えられた場合は、「元の建物の一部(付合)」と「別個独立した建物」、どちらとみなされるのでしょうか。

 AはXから土地を賃借し、建物(1)(13坪の平屋)を建てました。
その9年後、この建物の一部をAから賃借していたPが、建物(1)の屋上に建物(2)(3坪)を増築。
のちにAが死亡したことで、B1~B6がAの地位を共同相続します。
これを機に、土地所有者Xは、AがPに建物(2)のための土地賃借権を無断で譲渡または転貸したとして土地賃貸借契約を解除し、建物(1)の収去と土地の明け渡しを求めてB1~B6を訴えました。

 他方、Pの死亡によってこの地位を共同相続したQらは、共同名義で建物(2)の保存登記をし、即日、B3(Aの相続人の一人)に売買して所有権移転登記手続をしました。
この建物(2)をめぐっても、土地所有者Xは、建物(2)の収去と土地の明渡しを求めてB3を提起しています。

 1審では、Bらが欠席するなどして十分に争わなかったため、土地所有者Xの請求が認められました。
しかし、2審ではXの請求が棄却されたため、Xが上告しました。

 最高裁は上告を棄却。

 ここではまず、建物(2)の構造が注目されました。
建物(2)は、建物(1)の一部の貸借人Pが自己負担で建物(1)の屋上に構築したもので、4畳半の部屋と押入各1個からできています。
外部への出入りは、建物(1)内の6畳間の中にあるはしご段を使用するしかないのです。

 とすれば、建物(2)は、既存の建物(1)の上に増築された2階部分とみるべきで、「元の建物の一部」ということになります。
したがって、建物(2)だけでは独立で取引できない以上、建物(2)に区分所有権(建物の専有部分に関する所有権で、建物の他の部分と独立して譲渡可能)は存在しないと評価されました。

 こうした事情から、最高裁は、たとえPが建物(2)を構築する際に建物(1)の一部の賃貸人Aの承諾を受けていた(=増築に対する一定の権利を与えられていた)としても、民法242条但書は適用するべきではなく、建物(2)の所有権は構築当初から建物(1)の所有者Aに属していたと認定したのです。

 そして、建物(2)についてPの相続人Qらの名義で所有権保存登記がされているとしても、この判断に影響はないと確認しました。

 以上より、建物(2)はPが構築したものではあるけれど、特段の事情がない限りは、その敷地にあたる部分の賃借権がPに譲渡または転貸されたとは言い難く、したがって、土地所有者XがBらやQらに請求をする根拠はないと結論付けました。

credit:Priscilla Wakefield House / Alan Stanton

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