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配偶者に同居を強制することはできる?

~大審院昭和5年9月30日決定~

 婚姻した夫婦には、共同生活を円満にするための「同居義務」があります(民法752条)。
  これは強行規定(当事者が合意していても排除できない決まり)であり、別居中であろうと離婚交渉中であろうと関係なく課せられる義務です。
  では、これに従わない配偶者を強制的に同居させることはできるのでしょうか?

 夫Xは、妻Yに対して同居請求訴訟を提起し、勝訴しました。
それにもかかわらず、同居義務を履行せずに別居を貫くY。

 納得のいかないXは、Yに

  1. 決定の日から15日以内にYがX宅に復帰して同居すること
  2. もしもこの期間内にYが同居義務を履行しない時は、その期限の翌日から遅延日数に応じて1日につき金5円(現在の物価で3000円前後)の賠償金を支払うこと

を命じる内容の間接強制決定を下して欲しいと、裁判所に強制執行を申し立てました(当時の民事訴訟法734条。債務の性質が強制履行できる類のものであれば間接強制を認めるというもの)。

 ちなみに、「間接強制」とは、債務を履行しない義務者に対し、「一定の期間内に履行しなければその債務とは別に間接強制金(上記(2)では1日につき金5円)を課す」と警告することで、義務者に心理的圧迫を加え、自発的に履行を促す制度です。

 裁判所は、1審・2審とも、Xの申立てを退けました。
 これに対しXは、Yに対する同居請求権は執行可能なものなのだから、間接強制を認めなかった1・2審決定は法令に違反していると主張。再抗告を申し立てました。

 しかし、大審院もXの主張を認めず、抗告を棄却します。

 まず、大審院は、強制履行できるかの基準を、債権の性質に求めました。
 債務者が自分の意思で履行するのでなければ、債権の目的を果たせない場合は、その債務を「性質上強制履行できないもの」と考えるべきだというのです。

 この点、夫婦間における同居義務も、債務者(妻Y)が自分で履行しなければ債権の目的を果たせないのが明らかなので、強制履行は不可能と判断しました。
 そして、強制履行できないものである以上、間接強制もまた許されないため、Xの抗告を棄却した原審判断は正当であるという結論に至ったのです。

credit:DrJohnBullas via photopin cc

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