サイト内検索:

名誉毀損による慰謝料額はどうやって算出する?

~最高裁平成9年5月27日判決~

 鋭い描写で読み手の関心を引く雑誌や新聞記事。
 しかし、時には、それが名誉毀損(民法710条)につながることもあります。

 日刊の全国版スポーツ新聞を発行するY社は、昭和59年2月15日付の新聞に、「X氏に保険金殺人の計画を持ち込まれた」、「あるサラリーマン、ショッキングな証言」などの見出しを付けた記事を掲載しました。

 Xは、この新聞につき、一般読者が「XがA氏という人物に対して、お互いの妻を殺して保険金を取ろうという計画を持ちかけた」と解するか、少なくともそのような印象を強く受けるとして抗議しました。
 そして、Xの名誉が著しく毀損されたとして、精神的損害の慰謝料300万円を請求し、訴訟を提起します(民法417条723条)。

 Yは、報道の事実は認めましたが、一般読者の印象や名誉毀損についてのXの主張は否認しました。

 原審は、名誉棄損による損害が発生したのは、「Xが現実に記事を閲読した時」と考えました。
 また、記事の後に、Xに対して有罪判決が出された事実を指摘し、現在ではXの社会的評価の低下はYの記事が原因ではないとしてXの請求権を認めませんでした。
 これを不服としたXが上告。

 最高裁は原審を破棄し、差し戻しました。
 まず、名誉毀損による損害発生の時期については、新聞記事による名誉毀損の場合、これを掲載した新聞が発行され、読者がこれを閲読しうる状態になった時点と考えるのが妥当と判断しました。
 一般読者がこの記事を読むことにより、事実を適示された人(X)の客観的な社会的評価が低下するため、本人が記事の掲載を知ったかどうかは関係ないと考えたのです。

 さらに、新聞発行による名誉棄損が生じた後で被害者Xが有罪判決を受けたとしても、これによって「新聞発行の時点で被害者の客観的な社会的評価が低下した」という事実自体は消えることはないので、被害者が有罪判決を受けたという事実をもって「損害が消滅した」と、既に生じたXのYに対する損害賠償請求権を消滅させることはできないとしました。

 また、最高裁は、加害者Yが被害者Xに支払うべき名誉毀損の慰謝料額は、事実審の口頭弁論終結時までに生じたあらゆる事情を考慮して裁判所の裁量で算定すると示しました。
そしてこの「あらゆる事情」には、Yによる名誉棄損以外でも、被害者Xの品性・善行・名声・信用等の人格的価値に対する社会的・客観的評価が更に低下したという事実があれば、それも含まれるとしています。
 したがって、慰謝料額の算定にあたっては、名誉棄損による損害が生じた後に被害者が有罪判決を受けたという事実も考慮することが許されると結論付けました。

ページトップへ