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何をすると罪になるのか?

 今回から新しい連載として「裁判員のための刑法入門」をお送りします。2009年5月からスタートする裁判員制度。参加するにあたって法律に関する知識は不要だとされていますが、耳慣れない法律用語が続くのはやはりつらいもの。そこで、この連載では裁判員が耳にしそうな言葉を中心にできるだけ具体的な例を挙げながら説明していこうと思います。

 第1回目の今回は、「何をすると罪になるのか?」というお話をしようと思います。
  読者の皆さんも様々な事件についての報道を見聞きしていると思います。「被害者をナイフで刺して殺した」というのであれば、それが罪になるのはわかりやすいと思います。では、「おぼれている人を助けなかったために、その人は溺死してしまった」場合は罪になるのでしょうか?「寝返りを打ったはずみで隣に寝ている人を蹴飛ばし、けがをさせた」はどうでしょうか?

 結果につながるすべての行為が罪になるわけではありません。例えば、上の寝返りの例は、客観的には傷害罪にあたりますが、罪にはなりません。無意識の行動についてまで責任を負うことは、無理を強いることになるからです。
  過去の判例でも、殺されようとする夢をみて、極度の恐怖感におそわれ、半覚醒状態で夢の中の相手の首を絞めるつもりで横に寝ていた妻の首を絞め殺害してしまったという事案について、意思に基づく支配がない行動について、刑罰法規の対象となる行為に該当しないという判断を示しています。

 次に、「おぼれている人を助けなかった」事案では、本人は何もしていません。このような場合でも、罪にになるのでしょうか。
  この点について、判例は行為者に結果の発生を防止する法律上の義務があり、かつ、結果の発生を防止することが可能であるにもかかわらず、その防止のための行為を何もしなかったために結果が発生してしまった場合には、何もしなかったことが罪になると判断しています。
  つまり、単に「おぼれている人を助けなかった」というだけで罪になるわけではなく、(1)おぼれているのが自分の子供であり、(2)泳いで助けるなり、他に人を呼ぶなりすることで助けることが可能であったにもかかわらず、(3)そうした行為をすることなく、(4)おぼれて死んでしまったような場合に限って、罪になるわけです。

 次回は「誰に対して刑法は適用されるのか?」について説明したいと思います。

| 目次 | 第2回 誰に対して刑法は適用されるのか?»

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