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責任能力

 第10回目の今回は、「責任能力」について説明します。

 凶悪事件が起こると、精神鑑定が行われることがあります。これは、責任能力の有無を確認するためです。責任能力とは、「物事の理非・善悪を弁別し、かつそれに従って行動する能力」のことで、責任能力がない場合、善悪の区別ができないか、善悪の区別ができたとしても、それに従って行動することができないので、その者を非難することができず、したがって罰することができないとされています。

 刑法では、責任能力が欠ける場合を心神喪失、責任能力は存在するものの、著しく限定されている場合を心神耗弱とし、心神喪失の場合は無罪となり、心神耗弱の場合は刑が減軽され、または免除されます。

 では、どのような場合に、心神喪失心神耗弱と判断されるのでしょうか。この点について、過去の裁判例では、被告人が犯行当時統合失調症にかかっていたとしても、そのことだけでただちに心神喪失の状態にあったとされるものではなく、責任能力の有無は、被告人の犯行当時の病状、犯行前の生活状態、犯行の動機・態様等を総合して判定すべきとされています。

 心神喪失が認められ無罪となったのは、過去数年では年間数人程度、心神耗弱が認められたのも年間80人程度となっています(犯罪白書より)。

 次回は、「責任年齢」について説明します。

○Q&Aコーナー

Q 精神鑑定とはどのようなことをするのでしょうか?
A 精神鑑定には、(1)取り調べの際に検察官から委嘱される起訴前鑑定、(2)起訴後に裁判所の命令で行われる正式鑑定の2種類があります。起訴前鑑定はさらに、1回だけの面接で結論を出す(a)簡易鑑定と、時間をかけて行う(b)嘱託鑑定に分けられます。
 どの鑑定も、最終的には「弁識能力」と「制御能力」の有無・程度を判断します。
  弁識能力とは、犯行時における、当該行為の性質・意味、当該行為の道徳的善悪、当該行為の法的善悪を理解し評価する能力をいい、制御能力とは、行為時において弁識能力があることを前提に、その弁識に基づいて自分の行動を制御して律する能力をいいます。

 鑑定人は、裁判所または検察官から捜査段階の資料などを渡され、その資料や被告人(被疑者)・関係者との面接、検査などを通じて、上記の弁識能力と制御能力の有無・程度を判断していくことになります。
  検査には、身体検査(血液検査、尿検査、心電図など)、神経学的検査(脳波検査、画像検査)、心理検査(人格検査、知能検査)がありますが、すべての検査を実施するわけではなく、疑わしい症状に合わせて必要な検査を組み合わせて実施しているようです。例えば、認知症が疑われるときには脳のCT検査を行う、薬物(アルコールや覚せい剤等)による中毒が疑われるときには血液検査や尿検査を行う、といった具合です。

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