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殺人罪(1)

 第18回目の今回から、裁判員制度の対象となる罪について説明をしていきます。今回は殺人罪を取り上げます。

 殺人罪は「人を殺した者は、死刑又は無期若しくは五年以上の懲役に処する。」というわかりやすい規定になっているため、これまでにも例でよく取り上げてきました。拳銃で撃ったり、ナイフで刺したりして人を殺した場合が、殺人罪の典型例です。

 もう一度、条文を見ると「『人』を殺した者」とされています。では、「人」とは何を指すのでしょうか。

 まず、いつから「人」となるかについては、胎児が母体から一部露出した時点で人となるというのが、判例の考え方です。
  ここで問題となるのが、通常よりも早く母体外に出てしまった胎児の扱いです。医療技術の進歩によって、妊娠22週程度でも胎児が母体外で生存できるようになりました。このため、早産で生まれた胎児に必要な医療を受けさせずに死亡させたような場合には、殺人罪の成立が認められる可能性があります。
  殺人罪ではありませんが、違法な堕胎によって、妊娠26週の胎児を母体外に排出させた医師が、その胎児を放置して死亡させたケースにおいて、胎児に適切な医療を受けさせていれば生存する可能性が高かったとして、裁判所は保護責任者遺棄致死罪の成立を認めています。
 
  次に、人はいつまで「人」なのでしょうか。こちらについては、(1)心臓の停止、(2)呼吸の停止、(3)瞳孔の散大・対光反射の消失の3つがそろった時に死亡したとするのが、一般的な考え方です(三徴候説)。これに対しては、脳全体の機能が不可逆的に停止した時に死亡したとする説(脳死説)が主張されていますが、臓器移植を前提としない脳死は、現在のところ、人の死と認められていません。
  このため、脳死状態の人を死亡させる場合(安楽死でよくみられるケース)は、殺人罪に問われますし、殺害しようとしたものの、脳死状態にとどまった場合には、殺人罪が成立しない(未遂にとどまる)ということになります。

 次回は、何が殺害行為にあたるのかについて、過去の裁判例をもとにして、説明したいと思います。

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