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傷害致死罪

 20回目の今回は、傷害致死罪について説明したいと思います。

 傷害致死罪は、「人を傷害し、よって人を死亡させた」ときに成立する罪です。加害者に殺意がなく、被害者が死亡した場合ですので、ニュースでもよく見る「被害者をナイフで刺したことは認めるが、殺すつもりはなかった」というのが典型例です。
  理論的には、殺人の故意がある場合には殺人罪、ない場合には傷害致死罪となるわけですが、上記の例を見てもわかるように、その判断は非常に微妙です。裁判員裁判でも殺意の有無は争点となると思われます。

 「傷害」については、「生理機能の障害」を意味し、暴行によらない傷害も認められます。したがって、病毒の感染、失神、PTSD(心的外傷後ストレス障害)などを生じさせることも傷害となりますし、嫌がらせ電話や怒号によって、不安・抑うつ状態にすることも傷害となります。過去の判例では、性病を感染させる恐れがあることを認識しながら、性病であることを秘して、被害者の同意を得て性交し、感染させた事例について、傷害罪の成立を認めています。

 また、傷害罪には「同時傷害の特例」という規定があります。これは、複数の人間が意思の連絡なく同時に暴行を加え、傷害の結果が生じた場合において、それぞれの暴行による傷害の軽重を知ることができないとき、または、その傷害を生じさせた者が明らかでない場合に、暴行に加わった者すべてに傷害罪が成立するというものです。そして、この同時傷害の特例は、傷害致死罪にも適用されるとされています。
  つまり、集団で暴行した結果、被害者は死亡したが、誰の暴行が致命傷となったのか明らかでない場合には、すべての者に傷害致死罪が成立するということになります。なお、加害者の間に意思の疎通があった場合には共謀共同正犯となり、同時傷害の特例を利用するまでもなく、すべての者に傷害致死罪が成立することになります。

 次回は、危険運転致死傷罪について説明したいと思います。

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