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遺棄罪

 24回目の今回は、遺棄罪について説明します。裁判員制度の対象となるものは、遺棄致死罪保護責任者遺棄致死罪の2つですが、立件されるものは保護責任者遺棄致死罪が大半です。

 保護責任者遺棄致死罪は、「老年者、幼年者、身体障害者又は病者を保護する責任のある者がこれらの者を遺棄し、又はその生存に必要な保護」をせず、その者を死亡させたときに成立します。不作為による殺人と行為の態様が似ていますが、殺意を持って遺棄、または放置したような場合には、殺人罪が成立します。
  立件されているものの多くは、児童虐待または病気の親族を放置して死亡させたケースです。いずれも目をそむけたくなるような事件ですが、過去のケースではそれほど重い刑とはなっておらず、懲役2年から4年程度となっています(法定刑は3年以上の有期懲役です)。

 上記以外のケースとしては、被告人が注射した覚せい剤により錯乱状態となった少女を放置したために、少女が急性心不全で死亡したケースや、泥酔状態にある被害者を家に連れ帰ろうとしたが動かないので、衣類をはぎ取って引きずったもののなお動かず、全裸状態で放置して帰宅したところ、被害者が凍死したというケースで、保護責任者遺棄致死罪の成立を認めています。

 次回は、誘拐罪について説明します。

○Q&Aコーナー

Q ひき逃げは保護責任者遺棄致死罪にはならないのですか?
A 実務上、ひき逃げに対して保護責任者遺棄(致死)罪が適用されるケースは少ないようで、自動車運転過失致死傷罪と道路交通法違反(救護義務違反)が適用されるのが通常です。過去のケースでは、被害者を自動車に乗せて事故現場を離れ、雪の降る薄暗い車道上まで運んでそこで放置した場合に、保護責任者遺棄罪の成立を認めています。
  なお、被害者を自動車に乗せた後、病院に連れて行かなければ死亡する可能性を認識しながら、犯行の発覚を恐れて、人気のない農道に放置したような場合には、殺人罪が成立するとしています。
  両者の違いは、他の人による救命可能性の有無によるものと考えられています。

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