サイト内検索:

出水及び水利に関する罪、往来を妨害する罪

 29回目の今回は、出水及び水利に関する罪往来を妨害する罪について説明します。
  どちらも耳慣れない罪ですが、裁判員制度の対象となる重い罪もあります。

 まず、出水及び水利に関する罪ですが、水力によって建造物を損壊したり、水防用の設備を損壊するような行為が罰せられます。裁判員制度の対象となるのは、現住建造物等浸害罪です。

 「現住」「建造物等」の意義は、現住建造物等放火罪と同じと考えられています。出水の手段については、特に制限はありませんが、同罪が公共危険罪(不特定多数の者の生命・身体・財産について危険を生じさせたことをもって処罰する罪)としての性質を有することから、単に建造物等に水をまいて水浸しにするといった程度では足りず、ある程度広い範囲を水没させる危険が生じるような手段である必要があると考えられます。

 次に、往来を妨害する罪ですが、こちらは道路や橋を壊したり、ふさいだりする行為や、電車の往来に危険を生じさせる行為、さらに電車を転覆させる行為などが罰せられます。このうち、裁判員制度の対象となるのは、汽車転覆等及び同致死罪です。

 この罪は、現に人がいる汽車・電車・艦船を転覆・破壊・沈没させることで成立します。汽車・電車の場合は、横転・転落させる必要があり、単に脱線させるだけでは「転覆」とはいえません。また、艦船の「沈没」とは、船舶の主要な部分が水中に没した状態をいい、単なる座礁を含みません。「破壊」については、投石等によって、窓ガラスを割る程度では足りず、汽車・電車・艦船の交通機関としての機能を失わせる程度の損傷を与えることが必要とされています。
  汽車転覆等致死罪については、汽車・電車・艦船を転覆・破壊・沈没させ、よって人を死亡させた場合に成立します。判例は、汽車等の転覆によって、乗客だけでなく、駅のホームにいた乗客や沿線住民が死亡した場合にも同罪が成立するとしています。ちなみに、汽車転覆等致死罪の法定刑は、死刑もしくは無期懲役とされており、有期懲役が規定されていません。これは強盗致死、強盗強姦致死と並んで、刑法上、二番目に厳しい刑となっています(一番厳しいのは死刑のみの外患誘致罪)。交通機関に対する妨害行為が社会に与える影響や事件が発生した場合は大惨事となりやすいことを考慮してのことと思われます。

 次回は、飲料水に関する罪について説明します。

« 第28回 放火罪 | 目次 | 第30回 飲料水に関する罪»

ページトップへ