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海賊行為処罰法

 37回目の今回は海賊行為処罰法を取り上げます。

 「海賊」と聞くと、いつの時代の話だ、と思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、この法律が公布されたのは、今年(2009年)の6月。裁判員制度の対象となる罪の中では、最も新しい罪です。

 海賊行為処罰法の目的は、「海賊行為の処罰について規定するとともに、我が国が海賊行為に適切かつ効果的に対処するために必要な事項を定め、もって海上における公共の安全と秩序の維持を図ること」とされています(同法1条)。

 この法律が制定された背景には、ソマリア沖で頻発している海賊行為があります。刑法上、日本人、日本の会社が所有する船舶内において犯罪が発生した場合、日本国内において罪を犯したのと同様、日本の刑法が適用されます(刑法1条2項船舶法1条)。また、日本の領海内についても、日本の刑法が適用されます。
  したがって、日本の船舶に対する海賊行為、あるいは日本の領海内で起きた海賊行為(他国の船舶も含む)については、強盗罪等での処罰がこれまでも可能でした。しかし、公海上で他国の船舶が海賊行為に遭っている場合には、日本の刑法が適用されない以上、海上における警察活動を担う海上保安庁も「手出し」ができない状態でした。

 そこで、同法は、船舶の強取、船舶内の財物の強取等の海賊行為を、それが行われた場所や対象となった船舶の所有者にかかわらず処罰することとして、海賊行為に広く対応できるようにしたのです。ちなみに、自力で海賊行為に対応できる軍艦や、軍艦等による警備が行われることが多い外国政府保有の船舶は、保護の対象から外されています。

 裁判員制度の対象となるのは、船舶の強取、船舶内の財物の強取、船舶内の者を人質に取る行為、人質を利用して義務のないことを強要する行為、およびこれらの行為を犯した者が人を死傷させる行為です。裁判員制度の対象事件ですから、いずれの罪も無期懲役を含む非常に重い罪ですが、その中でも海賊行為によって人を死亡させた場合は、死刑または無期懲役とされており、有期懲役の選択がない点で、特に重く罰せられることに なります。

 なお、同法は海賊行為に対する対処を海上保安庁が行うと規定しています(同法5条)が、海賊行為に対処するために特別の必要がある場合には、自衛隊が対処することができるとされています(同法7条)。現在、ソマリア沖・アデン湾で海賊に対する対処行動(船舶の護衛など)を行っているのは、自衛隊の護衛艦、哨戒機です。

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