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女性天皇・女系天皇の是非について

一、なぜ問題となっているのか

 最近、衆議院の予算委員会において、皇室典範の改正の議論がなされており、マスコミもこの問題を大きく取り上げています。さらに、秋篠宮妃がご懐妊されたこともあり、世間の注目が集まっています。

 日本国憲法2条は、「皇位は、世襲のものであって、国会の議決した皇室典範の定めるところにより、これを継承する。」とし、これを受けた皇室典範は、「皇位は、皇統に属する男系の男子が、これを継承する。」となっています(皇室典範1条)。
 男系とは、父方をたどると神武天皇につながる家系のことを言います。今の皇太子の子どもは、愛子内親王のみです。そうすると、現在の皇室典範を改正しなければ、愛子内親王は、皇位を継承することができないことになります。また、現在皇太子や秋篠宮、その他の皇族方の最後のご子孫は、全員が女性です。皇室典範を改正せず、このまま男系の男子が生まれない場合、皇位の継承者がいないことになります。
 このような事態を回避するため、女性天皇女系天皇(父方をたどると神武天皇につながらない家系)を容認すべきではないかという議論がなされているのです。

 そこで、今回は、女性天皇・女系天皇の是非を皆さんとともに考えてみようと思います。

二、皇室制度について

 そもそも、皇室とは、天皇および皇族の総称であり、天皇を家長とする一個ののことを指します。皇室制度が体系的・法制的に確立したのは明治以降です。

 明治憲法下では、皇室は、一般法律である国務法とは別個の法体系である「宮務法」によって規律されていました。
 宮務法には、1889年制定の皇室典範をはじめ、皇室令として発布された登極令・皇統譜令・皇室祭祀令・皇室親族令・皇室財産令・皇室儀制令・皇族身位令・皇室裁判令などがありました。これらの制定に国会は関与しませんでした。皇室は一般国民とはまったく違う特別の存在であることが、法体系によってもはっきり示されていたのです。
 しかし、第二次世界大戦後の1947年の日本国憲法の施行に際して、従前の皇室令および付属法令はすべて廃止され、皇室に関する事柄も憲法および法律によって規律されることになりました。現在の皇室典範は、国会の協賛を経て公布された普通の法律です。

 皇室は、天皇と皇族で構成されています。これらの方々は、内廷にある方々と、それ以外の宮家の皇族方とに分かれています。
 現在、内廷にある方々は、天皇、皇后、皇太子、皇太子妃、敬宮(としのみや)の5方です。宮家の皇族方は、秋篠宮(4方)、常陸宮(2方)、三笠宮(2方)、?ェ仁(ともひと)親王(4方)、桂宮(1方)、高円宮(4方)の各宮家の17方です。

 現在の皇室典範によると、皇位(天皇の地位)は男系の男子がこれを継承するとなっていますから、女性が皇位に就くことは認められていません。
 そして、その順位は、

  1. 皇長子
  2. 皇長孫
  3. その他の皇長子の子孫
  4. 皇次子とその子孫
  5. その他の皇子孫
  6. 皇兄弟とその子孫
  7. 皇伯叔父とその子孫

となっています(皇室典範2条1項)。以上の皇族がないときは、それ以上で最近親の系統の皇族に伝えることになります(同条2項)。

三、女性天皇について

 初代神武天皇から現在の天皇である明仁天皇まで125代の天皇のうち、過去に8人10代の女性天皇が存在します。

 すなわち、

  1. 第33代の推古天皇(西暦593年~628年)
  2. 第35代の皇極天皇(642年~645年)
  3. 第37代の斉明=皇極天皇重祚(655年~661年)
  4. 第41代の持統天皇(686年~697年)
  5. 第43代の元明天皇(707年~715年)
  6. 第44代の元正天皇(715年~724年)
  7. 第46代の孝謙天皇(749年~758年)
  8. 第48代の称徳=孝謙天皇重祚(764年~770年)
  9. 第109代の明正天皇(1629年~1643年)
  10. 第117代の後桜町天皇(1762年~1770年)

です。
 3. と 8. の重祚(ちょうそ)とは、一度退位した天皇が再び皇位につくことをいいます。第35代の皇極天皇が第37代の斉明天皇となり、第46代の孝謙天皇が第48代の称徳天皇となったという2度の重祚があります。

 これらの女性天皇の共通点は、

  1. 皇室の直系であること、
  2. 皇后ないしは未婚の皇女であること

です。つまり、夫が天皇である場合を除き、夫をもった女性天皇はいまだ存在しません。

四、諸外国の女性の王位継承

 日本の天皇制度と類似した制度として、諸外国には国王制度があります。
 皇位の承継について、日本では、憲法および皇室典範に定めていますが、イギリスでは、王位継承法を制定しています。ベルギー、オランダ、ノルウェー、スウェーデン、スペイン、カンボジアでは、憲法に規定を置いています。デンマーク、タイでは、日本と同様、憲法に抽象的な規定を置き、王位継承法に詳細な規定をしています。

 日本、カンボジアでは、女性に皇位・王位継承を認めていません。ベルギー、オランダ、ノルウェー、スウェーデン、タイでは、男性・女性を問わず、平等に王位の継承を認めています。イギリス、デンマーク、スペインでは、男性優先ながら、女性にも王位の継承を認めています。

五、天皇制度の役割と権限

 わが国の憲法は象徴天皇制を採っており、天皇は日本国の象徴であり日本国民統合の象徴であって、この地位は、主権の存する日本国民の総意に基づくとされています(憲法1条)。

 天皇は、国会の指名により内閣総理大臣を任命し、内閣の指名により最高裁判所の長官を任命します(憲法6条)。また、内閣の助言と承認により、国民のために、法律の公布、国会の召集、衆議院の解散・総選挙の施行等の国事行為を行います(憲法7条)。これらの天皇の国事行為については内閣が責任を負います。

六、女性天皇・女系天皇の是非

 象徴天皇制度をとるわが国も、安定的な皇位の継承が必要となりますが、現行の皇室典範を維持すると、現在の皇室の構成では、早晩、皇位継承資格者が不在となるおそれがあります。そうすると、憲法が定める象徴天皇制度の維持や長い歴史を持つ皇位の継承が不可能となりかねない状況となっています。
 したがって、将来にわたって安定的な皇位の継承を可能にするための制度を早急に構築することは、現在のわが国にとって避けて通ることのできない重要な課題なのです。

 この問題への解決方法として、(1) 女性天皇・女系天皇を容認するべきであるという意見があります。現在の男女平等社会においては、国民の家族制度と同様、天皇の皇位継承においても男女は平等に扱われるべきであるという考えを根拠としています。

 これに対して、(2) 女性天皇・女系天皇を認めるべきでないという意見があります。この意見は、女性天皇がご懐妊された場合、国事行為の中断や代行が必要となる事態を避ける必要があることを根拠としています。

 また、両者の折衷的な意見として、(3) 女性天皇は認められるが、女系天皇は容認できないとする意見もあります。これは、約2000年におよぶ天皇制度の歴史と伝統、すなわち、天皇の父方をたどると初代天皇である神武天皇につながるという万世一系を守るべきであるとすることを根拠としています。
 この意見によれば、愛子内親王が皇位を継承された場合、男系女性天皇となり容認できますが、その後、愛子内親王のご子孫が即位した場合、または、他の女性皇族が皇位を継承した場合には、女系天皇として認められない、ということになります。

 さて、あなたはどう考えますか。アンケートにお答えいただき、率直なご意見をお寄せください。

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