「課長になったら給料が減ってしまった...」という話しを聞いたことがあるかもしれません。管理職になった途端残業手当がつかなくなった、というのが理由として多く挙げられています。
従業員を管理職にすれば残業代を払わなくても本当に良いのでしょうか?
)については、原則として労働時間、休憩、休日に関する規制が適用されないことになっています。
この人達については、従事する業務の性質や勤務状態から労働時間規制を及ぼすことが適当でないと考えられたことがその理由です。
とはいっても、深夜労働の規制については適用除外されませんので、深夜割増賃金(22時から翌日5時まで)は支払う必要があります。また、有給休暇についても一般社員と同様に与える必要があります。
課長になって残業代がつかなくなったというのは、一般的には、課長が「管理監督者」に該当するからです。
権限も与えられず、相当の待遇もないまま「課長」の肩書だけを与えられてしまった、というケースも時折あります。セールス担当者全員に「課長」や「署長」といった肩書をつけているケースもあります。
このような場合も「管理監督者」に該当するのでしょうか?
「管理監督者」に該当するかどうかは、
という判断基準が示されています。
すなわち、「課長」「部長」などの名称にとらわれず実態に従って判断されます。
「課長」という肩書でも、自分の裁量で行使できる権限が少なく、常に上司の決裁を仰ぐ必要があったり、上司から部下へ命令を伝達するだけにすぎないような場合は、(1)の要件を満たしません。
管理監督者に該当すると勤務時間の制限がありませんので、勤務時間の制限がない以上、出退勤時間も自分の裁量に任されていることが必要となります。
遅刻や早退をしたら給与や賞与が減らされるような場合は、(2)の要件を満たしません。
その地位に相応しい基本給や役職手当などが交付されていない場合は、(3)の要件を満たしません。
上記の判断基準が示している要件を欠く場合には、「管理監督者」には該当しないことになりますので、残業代の支払いが必要となります。
「管理監督者」の範囲が問題となった裁判例はかなり多くありますが、代表的なものをいくつかご紹介いたします。
支店営業方針の決定権限等を有さず、かつタイムカード等で厳格な勤怠管理を受けていた「販売主任」について、管理監督者該当性が否定されたケース(ほるぷ事件 東京地判平成9年8月1日)、アルバイトの採用等一定の権限は有するもののその範囲は店舗内に限られ、労働時間も自分では決められず、処遇も不十分であった「店長」について、管理監督者該当性が否定されたケース(日本マクドナルド事件 東京地判平成20年1月28日)などがあります。
他方で、求人や募集計画について指揮命令する権限を与えられ、タイムカードを刻印していたものの、実際の労働時間は自由裁量に任されていた「人事課長」について、管理監督者該当性を肯定したケースもあります(徳洲会事件 大阪地判昭和62年3月31日)。
配偶者が死亡した後に、離婚とほぼ同じような効果が得られる法的制度があるって本当?
民法728条2項では、「夫婦の一方が死亡した場合において、生存配偶者が姻族関係を終了させる意思を表示したときも、前項と同様とする」とあり、前項では、「姻族関係は、離婚によって終了する」とあります。
これを受けて、戸籍法96条では、「民法第728条第2項の規定によつて姻族関係を終了させる意思を表示しようとする者は、死亡した配偶者の氏名、本籍及び死亡の年月日を届書に記載して、その旨を届け出なければならない」と定めています。
この届出を「姻族関係終了届」と言います。
死亡した配偶者からの相続は、死亡時点で権利が確定しているため、影響は受けません。
この制度は、例えば、配偶者の死後、配偶者の親の扶養義務を負いたくなかったり、同じお墓に入りたくなかったり、あるいは法事などの際に親戚とつきあいたくなかったりするときなどに活用されているという実情があります。
むちうちは、骨折などとは違い、見た目では特に異常が感じられないのに、本人は痛みやしびれなどのつらい症状を感じているという特徴があります。そのため、症状が残っていることを客観的に証明することが難しく、後遺障害の等級認定を巡ってはさまざまな困難が生じます。
そこで、むちうちでも後遺障害の等級認定をとるために、注意すべき点を解説します。
交通事故によるけがの治療を続けていると、それ以上はよくならないという時期がやってきます。これを症状固定といいます。
後遺障害とは、症状固定になった後、身体に障害が残った状態をいいます。この場合、症状固定前の損害(治療費・入通院慰謝料等)とは別に、逸失利益と慰謝料を請求できます。
ただ、交通事故の被害者は多数にのぼるため、すべての被害者について、損害を個別に算出することは困難です。そこで、後遺障害の認定を迅速かつ公平に処理するために、慰謝料や労働能力喪失率の算定の基準となる等級が定められています。自賠責保険においては、等級が認定された後遺障害のみが賠償の対象とされます。
後遺障害の等級認定の手続きは、加害者側の任意保険会社が手続きを行う事前認定と、被害者が自分で加害者の自賠責保険会社に申請する被害者請求があります。
被害者請求の大まかな手続きの流れは、以下の通りです。
多数の案件を迅速かつ公平に処理するため、後遺障害の等級認定は、提出した書面の内容によってのみ行われます(書面主義)。そのため、適切な等級認定を得るためには、等級認定の基準を踏まえた書類をきちんと整えることがポイントになります。
中でも、後遺障害診断書の記載は重要です。症状が医学的にきちんと説明されていること、自覚症状の内容、後遺症に至ったプロセスが書かれていることなどが必要です。診断書の作成を医師に依頼する際は、何をどう書いて欲しいのかをきちんと伝えるようにしましょう。
特に、むちうちは、痛みやしびれなどの自覚症状はあっても、レントゲンやMRI検査ではそれが判明しにくいため、書面の内容で症状を証明することには困難がともないます。その場合は、医師と相談して、ジャクソンテストやスパークリングテスト、腱反射テストや筋電図などの検査を実施してもらうことを検討するとよいでしょう。具体的な記載(例えば、首を何度くらい曲げると上・下肢がしびれる、などと記載し、写真を添付するなど)も効果的です。
後遺障害慰謝料の支払基準には、次の3種類があります。
賠償額は、
(1)自賠責基準 < (2)任意保険基準 < (3)裁判所基準
の順に大きくなります。特に、重大な障害が残って高い等級に該当する場合は、慰謝料が高額になり、その分算定基準の違いに基づく金額の差は大きくなります。
早期に解決しようとあせるあまり、保険会社の担当者の言うままに示談に応じてしまうと、十分な損害賠償を得られずに終わってしまいかねませんので、注意が必要です。
「むちうち」とは、自動車の追突や衝突によって、首の部分にむちがしなるような急激なショックがかかって、頭や首の部分を損傷する怪我です。これは正式な傷病名ではなく、「頸椎捻挫」「頸部挫傷」「外傷性頸部症候群」などと診断されています。
具体的な症状としては、首筋・背中・肩などの凝りや痛み、頭痛、耳鳴り、めまい、吐き気、手足の痺れや震え、食欲不振、脱力感などがあります。これらの症状は、事故当日はほとんど見られず、翌日あたりから現れることが多いようです。
これらのむちうちの症状には、レントゲン検査や脳波検査をしても他覚的所見が認められないことが多いという特徴があります。「他覚」的所見とは、本人でない医師や医療従事者が、診察や検査をして分かる症状という意味です。つまり、いくら本人が痛みや痺れなどの自覚症状を訴えても、それを他の人に分かってもらうことが難しいのです。
むちうちの治療方法は、湿布で冷やす、痛み止めの薬を投薬する、首にかかる負担を軽くするために頚椎カラーをつける、骨のずれをもとに戻すために行う牽引、固まった筋肉を温める温熱療法などがあります。
通常は2~3か月程度、長くても1年以内に治ると考えられていますが、一部には1年以上の長期にわたり通院しているケースもあります。
むちうちの治療のために接骨院や整骨院で施術を受けている場合は注意が必要です。接骨院や整骨院では後遺障害等級認定に必要な診断書を書くことができません。また、医師の指示に基づかない施術は保険会社から施術費の支払いを受けられない可能性もあります。まずはきちんと整形外科など医師のいる病院で治療を受けることがポイントになります。
治療が長期化した場合、保険会社が治療費の打ち切りを通告してくることがあります。保険会社からの治療費の支払いが打ち切られても、健康保険を使って治療を継続することができます。
症状が残っていて、主治医がまだ治療を継続する必要があると言っているような場合には、保険会社がどう言おうと治療を継続すべきでしょう(かかった費用は後から保険会社に請求することができます)。
保険会社から治療費の支払いを継続してもらいたい場合は、交渉が必要になります。その際には、主治医が治療の継続を必要と考えていることを診断書等で明らかにしてもらうことが重要です。
交通事故でけがを負ってしまった場合、治療に通うかたわら、保険会社と損害賠償についてのやりとりをしなければなりません。特に、むちうちのように見た目には分かりにくい症状を抱えていると、周囲の理解が得られず、つらい思いをしたという話も耳にします。
適切な等級認定を受け、負担を軽減するためには、後遺障害の等級認定を得意とする専門家(弁護士や行政書士)に相談するのも一つの方法です。
犯罪被害者等の権利利益の保護を図るための刑事手続に付随する措置に関する法律は、23条で損害賠償命令手続を定めていますが、刑事手続中において、当該犯罪に関する民事上の請求を許すというような制度は、戦前にも存在したのでしょうか?
戦前の旧刑事訴訟法は、附帯私訴という制度を設けていました。
これは、刑事裁判に関してその被告事件から生じた民事上の請求についても、刑事事件と併せて審理・裁判をするというもので、厳密にいえば、犯罪被害者等の権利利益の保護を図るための刑事手続に付随する措置に関する法律23条の制度とは異なるものの、ほぼ似たような制度でした。
大阪市は、滞納給食費の回収業務の一部を弁護士に委託するとのことです。大阪市での滞納給食費は1億円を超す額だともいわれていますので、公平性の観点からもその回収をすべきだと思われます。
ところで、未払給食費の回収主体は、小中学校ごとに独立で会計を行っている場合にはその学校となり、自治体として給食費を一括管理している場合にはその自治体となります。
今回の弁護士委託は大阪市が行っていますので、大阪市が市内の小中学校の給食費を一括管理しているケースでしょう。
このような一括管理方式でなく、独立会計方式ですと、滞納金額や滞納者の数などの問題で、弁護士委託とはなかなかいかないでしょうが、現実には全国の7割程度が独立会計方式だともいわれていますので、自治体においても一括管理方式とする再考が必要ではないでしょうか。
大阪に限られるわけではないでしょうが、義務教育であることを理由として支払わない人もいるようです。方便なのか、心底 義務教育=給食費無償と思っているのか分かりませんが。
憲法26条2項は、「義務教育は、これを無償とする。」と定めています。ではその無償の範囲に給食費も含まれるのでしょうか。最高裁の判例は、憲法が要請している無償の範囲について、授業料の無償を意味するとしています。
したがって、給食費は憲法が要請している無償の範囲には含まれていません。
もっとも、義務教育諸学校の教科用図書の無償措置に関する法律は、授業料に含まれない教科書の無償配布を定めていますが、これは憲法の趣旨を拡大して、法律で無償としたものです。
さて、滞納給食費の回収を弁護士に委託することは評価されるべきことだと思います。
弁護士の名前で内容証明郵便による督促を行い、簡易裁判所に支払督促の申立などを行うことになるのでしょうが、すべて定型的なひな形を用意しておけば、ルーティンワークとして対処することができますので、弁護士もさほどの負担となりませんし、ということは大阪市の支払う弁護士費用(出来高制だそうです)もさして高額となるとは思えず、これまでの行政負担からの解放を考えると、費用対効果も問題ないでしょう。
また、他の自治体では、弁護士が介入すると告知しただけで滞納分を支払った人もいるようですし、実際に弁護士が介入して、弁護士の名前で内容証明郵便が届くことによって、裁判前に支払いに応ずる(裁判外の和解となって分割払いでも)人も多く見込めるのではないでしょうか。
雑居で朝のすべての事が終了すると、出房を待つだけである。朝は忙しいので用便に行く者はいない。大体、夜型に変更しておくのである。私も新入雑居からそのようにしていた。
「出房準備」という刑務官の掛け声で、所定位置に坐して待つ。どのように行進して、どこで止まるかなど、先頭の者(四番席)をきちんと見ておくように言われる。2~3日後には私が先頭となるのだそうだ。
先頭になったとき、止まる場所を行き過ぎようとして、後ろから引っ張られ止められた。帰房してから怒られた。
刑務作業を終えて、行進をして帰房し点検を受けると、夕食であって、朝食と同じように何も覚えられない私は怒られ、食事の配分が公平ではないとまた怒られるという状況だった。
しかも、朝食とは違って、カレーなどのスプーンを使う料理も出る。だから、各自のスプーンを用意する必要がある。これは配食の前にすべきことである。つまり、その日の夕食が何かを覚えていなければならないということである。
その日その日の献立(というか半月の献立は昼食の際に回ってくる紙に書いてある)であれば、さすがに私でも覚えておくことはできる。しかし、連休が続いた場合、そのすべてを覚えておかなければならない。
「覚えていないの?」と言われることもしばしばあった。配食されてから、今晩の夕食はスプーンが必要だったなということで、そこでスプーンを用意したところで、特段何か支障が生ずるとは思えないが、そこでもそのようなことは言えない。
概して、私は、「すみません」と言うこと以外、ほとんど会話をしなかったように思う。
夕食後も大変な作業が待っている。これが最も辛かった。しかもローテーションはなく、新人の仕事であった。
何かといえば、前にも書いた流し台の掃除である。流し台は大人3人が優に並んで歯磨きができる大きさである。蛇口も3個ついている。
この大きさの流し台を、クレンザーを使って毎日掃除しなければならない。真冬であるが、刑務所であるから、温水など出てくるわけがない。手を切るような冷たい水で洗わなければならない。しかもただ洗うだけでなく、前にも書いたが、水滴がまったく残らないように、仕上げの乾拭きも必要である。
他の者が夕食後のひとときで談笑している間、一人でもくもくと仕上げるのである。やっと終わったと思うと、四番席の者による点検があり、「ここ水滴残ってるじゃない」と注意を受ける。
そもそも、流し台を水滴一つないようにしたところで、その後にトイレに行った者が手を洗ったりして、水滴がつくのだから、まったく無意味ではないかと思うが、そのようなことも言えない。
その後やっと自分の時間を持つことができ、本を読んだり、手紙を書いたりする。
テレビが始まると、みなさん自分の所定位置でテレビ鑑賞となるが、私の所定位置はテレビの真ん前になってしまうので、他の人の邪魔にならない場所に小机を持ってきて、そこで本を読んだりすることとなる。
その小机についても、問題があったのだが、それは次回に書くことにする。
元女優の高樹沙耶容疑者が沖縄県内で大麻を隠し持っていたとして10月25日厚生労働省の麻薬取締部に大麻取締法違反の疑いで逮捕されました。高樹容疑者は自分のものではないと容疑を否認しているということです。
昨年末は女優が自宅でコカインを所持していたとして麻薬取締法違反で逮捕され、今年に入ってからは2月に元野球選手が覚せい剤取締法違反で逮捕、さらに6月に元俳優が覚せい剤取締法違反と大麻取締法違反で逮捕されるというように芸能人の薬物がらみの逮捕が相次いでいます。
薬物を取り締まる法律は、覚せい剤に関して規制を行う「覚せい剤取締法」、大麻に関する「大麻取締法」、ヘロイン・モルヒネ・コカイン・向精神薬等に関する「麻薬及び向精神薬取締法」、あへん(けし、けしがら等)に関する「あへん法」などがあります。
今回は、ニュースでよく見る「覚せい剤取締法」と比較しながら「大麻取締法」の詳細について見てみたいと思います。
覚せい剤については、輸入・輸出・製造した場合は、1年以上の有期懲役(41条1項。営利目的の場合は、無期又は3年以上の懲役、1000万円以下の罰金が併科される場合もあります)、譲渡・譲受・使用は10年以下の懲役(営利の場合は1年以上の有期懲役、500万円以下の罰金が併科される場合もあります)に処されるおそれがあります。
また覚せい剤の原料を輸入等した場合についても処罰の規定があります。
大麻については、栽培・輸入・輸出をした場合は、7年以下の懲役(営利の場合は10年以下の懲役、300万円以下の罰金が併科される場合もあります)、譲渡・譲受・所持をした場合は5年以下の懲役(営利の場合は7年以下の懲役、200万円以下の罰金が併科される場合もあります。)に処されるおそれがあります。
覚せい剤よりはやや軽い刑罰が定められています。
大麻取締法では、「所持」は罰せられますが、実は、「使用」自体では罰せられません。なぜなら「使用」を禁止する規定がないからです。
この不思議な点については、いくつかの説がありますが、大麻は古来から様々な用途に使用されてきたことから、「使用」については処罰しないとしたのではないかという説が有力です。
もっとも、使用しても大丈夫!ということにはなりません。使用する場合は、「所持」が前提となりますので、所持していたことを理由として処罰される可能性が非常に高いでしょう。
また、平成3年の改正で大麻取締法には国外犯処罰規定が定められました。日本国外で大麻の輸出入や譲渡・譲受・所持等の行為を行った者についても、日本の法律で処罰されます(法24条の8)。
海外では大麻が合法となっている国もありますが、そこで日本人が大麻を入手した場合、処罰されるおそれもあるということです。
大麻については、医療大麻であれば使用を許すべきという議論が国内でも出てきており、今回逮捕された元女優も医療大麻の解禁を求めて活動を行っていたそうです。
しかし医療大麻については未だ認められているものではありません(こちらの記事を参照)。定められている処罰も覚せい剤よりは軽いとは言え、決して軽いものではありません。
どのような理由であれ、大麻に手を出すということは、絶対にしないようにしましょう。
刑法130条で規定される「邸宅」という言葉の意味は次のいずれでしょうか?
刑法130条で規定される住居侵入罪では、「正当な理由がないのに、人の住居若しくは人の看守する邸宅、建造物若しくは艦船に侵入し、又は要求を受けたにもかかわらずこれらの場所から退去しなかった者は、3年以下の懲役又は10万円以下の罰金に処する」とあります。
この条文では「人の住居」と「人の看守する邸宅」という言葉が出てきます。
前者は「人がいる場所。住んでいるところ」という意味があります。
後者は、別概念になり「人の看守する」というのは「人がいないけれども支配している」という意味になりますから、それにつながる言葉として規定される「邸宅」は「人がいないけれども支配下にある家」、つまりは空き家という意味になります。
オンラインゲーム「ドラゴンクエストX」でチート行為が問題になっています。チートとは、直訳すると「ズル」。ゲームの世界では、本来とは異なるプログラムを起動させたりして、ゲームを優位に進めてしまえる行為を指します。
ドラゴンクエストXにおいては、ゲームキャラクターが武器の生成を行える機能があります。本来であれば、ほとんど生成することができない有用な武器を、ゲーム会社が用意していないプログラムを外部から用いるなどして、どんどん生成するというものです。
簡単に言えば、ゲームでドーピングが行われているようなものとなります。
話が脇道にそれてしまいましたが、こうしたチート行為は昨今、ネット上の掲示板で発見されるやいなやゲーム運営会社に"通報"され、プレイヤーはアカウント削除などを通じて、プレー資格を剥奪されるなどの対応が取られています。
さて、こうしたチート行為は何らかの犯罪になったりはしないのでしょうか?
この点、古くは三国志III事件というものがあります。これは、ゲームデータ改造ツールを販売した会社をゲームメーカーが特許権侵害で訴えた事件です(東京高判平成11年3月8日)。もっとも、これは特許権侵害の事案であって刑事事件ではありません。
古い判例に刑事事件がない理由としては、行為の形態にマッチする法令がないために、刑事犯として処罰できないという部分があるためです。
もっとも昨今では、電子計算機損壊等業務妨害罪(刑法234条の2)などの法令をもとに警察が摘発に動いたケースがあります。
これは、コンピューターや電磁的記録を破壊して、そこで行われる業務(ゲーム)を妨害すると罰せられるものです。
もっとも、チート行為のやり方によっては、プログラムを解析して、プログラムの弱点を突いた「やり方の工夫」でチート行為が成立する場合があり、電磁的記録を「破壊」したといえるかどうかが微妙なケースもあるため、犯罪として処罰するのが難しいと言えます。
また、そもそも犯罪として処罰すべき内容なのか(厳密に言えば、守るべき法益が何か?)という点も考えるべきものがあります。
このように、チート行為を犯罪として取り扱うにはなかなか難しい課題があると言えます。
筆者としては、ドラゴンクエストと言えば、「復活の呪文」で特定の内容を入力すると非常に強力なキャラクターでゲームを始められるというメーカー公認の裏技を思い出すばかりで、プログラムを解析することができることに驚きを禁じ得ないのですが、メーカーとプレーヤーの進歩に法律がついていっていない事例といえるのではないでしょうか。
選挙期間に入ると、各報道機関は政党の獲得議席予想などを世論調査を踏まえて実施する場合があります。
これは適法な行為でしょうか?
世論調査であるため、一見すると何の問題もないと思われます。
しかし、公職選挙法138条の3では、「何人も、選挙に関し、公職に就くべき者(衆議院比例代表選出議員の選挙にあつては政党その他の政治団体に係る公職に就くべき者又はその数、参議院比例代表選出議員の選挙にあつては政党その他の政治団体に係る公職に就くべき者又はその数若しくは公職に就くべき順位)を予想する人気投票の経過又は結果を公表してはならない」と規定されています。
素直に解釈すれば、設問のような調査も違法なのではないかとの疑いが生じます。しかし、東京高判平成3年2月8日では、新聞各社が独自の取材活動で得た情報をもとに、選挙情勢を報道することは、選挙人の自由な判断を阻害しないものとして適法であるとの判断を下しています。
要は、先述の規定の趣旨は「投票するための判断材料として、人気投票のような不確かな情報を広めてはダメ」というものです。
反対に、選挙情勢をきちんとした取材に基づき、報道することは問題無しという判断です。
もっとも、「中立公平だ!」としつつ、報道機関によって色があるのは周知の事実ですから、なんとも納得がいかない部分があるとも思います。
甲は窃盗罪で逮捕状によって逮捕され、乙は窃盗罪で現行犯逮捕されました。
甲も乙も、最寄りの警察の留置場に入れられましたが、警察官のすきを見てその日に警察から逃走をしました。
甲乙に逃走の罪は成立するのでしょうか?
刑法97条は、「裁判の執行により拘禁された既決又は未決の者」について、単純逃走罪が成立するとしています。甲も乙も「未決」であることに問題はありません。
しかし、ここで「裁判の執行により拘禁」というのは、未決についていえば、勾留の裁判によって勾留されていることを意味します。
ところが、甲も乙も留置されているだけで、勾留されているわけではありませんから、逃走の罪は成立しません。
相続関係法規を定めている民法について、法務大臣の諮問機関の法制審議会の民法(相続関係)部会は、高齢化社会の進展によって、相続人である配偶者が高年齢化し、その生活保障の必要が相対的に高まり、子供の生活保障の必要性が相対的に低下していることを前提として、相続人である配偶者の生活への配慮という観点から、相続法制を見直す時期にきていることを理由に、平成29年中にも改正案を提出するように、その改正作業を進めています。
改正試案はいくつかにわたるのですが、重要な点は、配偶者の相続分の見直し、相続人以外の者による被相続人に対する療養看護や財産形成の貢献を考慮するための方策、配偶者の居住権を保護するための方策です。
このうち、配偶者の相続分の見直しについて見てみましょう。
まず、配偶者の相続分について、現行法は、子供がいる場合には、配偶者が2分の1、子供が残り2分の1を均等割りすることとされています。これに対して、審議会の試案は、二つの案を出しています。
一つは、夫婦間の合意及び20年又は30年の婚姻期間を要件として、配偶者の相続分を3分の2とするもので、他の一つは、20年又は30年の婚姻期間だけを要件として配偶者の相続分を3分の2とするものです。
これは、20年又は30年という婚姻期間があることによって、相続人である配偶者が相続財産の形成に大きく貢献しているとの前提事実に立って、だから残された配偶者の相続分を上げようとするものです。
ただ、パブリックコメントは反対意見が多数でした。確かに、婚姻期間が長期間であるという形式論では、婚姻期間は長いものの、ほとんど形骸化した夫婦であったという場合に対処できませんし、そのような事例も決して少なくありません。
つまり、20年又は30年の経過だけで相続人である配偶者が相続財産の形成に貢献したという前提事実(立法を支える事実で立法事実ともいいます)が崩れてしまうのです。
また、相続人である子供自体が相続人である配偶者よりも相続財産の形成に貢献しているという場合もあります。
例えば、相続人である配偶者が専業主婦で、子供が被相続人の個人事業の手伝いをしていたということもよくあることです。
もっとも、現行法も、相続人である子供よりも相続人である配偶者を優遇していて、2分の1の相続分を認めているのですが、それに合理性があるかといえば、特段の合理的根拠があるわけでもありませんので(半分くらいは配偶者にという程度ではないでしょうか)、難しい問題かと思われます。
とにかく雑居での新入りは多忙であり、かつ辛い。
布団の上げ下ろしの際には、必ず窓を開けるというルールがあった。時々忘れてしまう、特に夜に布団を敷くときに失念していることが度々あった。ここでも叱責である。埃がまって迷惑だというのが、その理由である。理由自体には納得がいったのだが、忘れてしまうことは致し方ない。
窓といえば、就寝の際には真冬であっても、必ず窓を5センチほど開けておく。結露防止だそうだ。しかし、窓際の私には、風が吹き付けてきて寒い。文句は言えない。
朝起きると、すぐにすべての布団を部屋の中央に集め、周囲から掃除を始める。また、窓を掃除する役目とかもある。
それぞれの担当にはローテーションがあり、部屋を掃除する人、洗い場のある板敷を掃除する人、窓を掃除する人などが決まっていて、1週間おきに変わる。
また、掃除の仕方、手順にもルールがある。しかし、掃除の手順を覚えることができず、いつも注意を受けていた。ここでも「すみません」の連発である。
朝食の準備も大変であった。少なくとも私にとっては。
これまた順番で、机と箸と湯呑をセットする人、食材の入ったタッパー、ご飯を受け取る人、タッパーに入った食事や味噌汁を各人に公平に盛り付ける人、空になったタッパーを洗う人といった役割が回ってくる。
部屋に常置されている箸と湯呑は、見た目はどれも同じであるが、各人のものが決まっている。小さく目印がつけられているのだ。
しかし、どの目印が誰のものだったかを覚えられないのである。昔から、仕事以外のことは覚えられない私であった。「それ違うだろ」と幾度も怒られた。
さらに苦手だったのが、おかずや味噌汁を公平に取り分けることであった。空になったタッパーを洗う人が待ち受けているので(食事開始前に洗う)、すばやく取り分ける必要がある。
納豆のように、それぞれが1パックになっているものは問題が起きようがない。大変なのは、味噌汁である。
5人分の味噌汁が入ったタッパーを左手に持ち、右手で持ったお玉で取り分けていく。もちろん、味噌汁の具も公平にしなければならない。タッパーを落としでもしたら大変なことである。慎重かつ手早くの処理が必要となる。
自分では公平に取り分けているつもりでも、ダメ出しがきて、箸で公平に分けていく。
ちなみに、ご飯は、人数分のご飯茶碗が入ってくるので、各人の前に置けばそれでよいかというと、そこにもルールがある。
ご飯茶碗の蓋やご飯茶碗自体は、長年の使用で、一部欠けていたり、汚れていたりする。その中で最もいたみのすくないご飯茶碗を一番席(といっても、私のいた雑居では二番席の計算工の人)から順に配るのである。中身に変わりがあるわけじゃなし、くだらないと思いつつも、そのようにする。
ある日、蓋がかなり汚れているが、ご飯茶碗自体は普通程度のものを、どうしようかと思いつつ、私のところに取り分けたら、怒られた。理由は、蓋は汚れていても食べるわけじゃないから、それを1番席にという、ご飯茶碗だって食べないだろうと内心で毒づいた。
朝食が終わると、箸と湯呑をきれいに洗って、所定場所にしまうことになる。この所定場所も決まっており、間違えることは許されない。
これが終了すると、順番に歯磨きをして、新人の私が最後の歯磨きを終えて、流し台やその下の板敷を掃除することになる。
流し台は、クレンザーできれいに磨き上げて、さらに雑巾で拭いて水滴を残さないようにしなければならない。長年そのようにされてきたせいだと思うが、蛇口などピカピカである。
しかし、真冬に長さ2メートル半もあろうかという流し台を、冷たい水で洗う作業はかなり辛い。このことは次回に説明をするが、とにかく早く独居に移りたかった。
洗いが終了すると、やっと自分の時間となるが、前にも書いたようにテレビの横の席である私は仮就寝でも横になることができず、9時になってやっと布団に入って休むことができる。(つづく)
佐賀県警は2016年10月18日、ストーカー規制法違反の疑いで福岡県に住む女を逮捕しました。容疑者は、2016年4月から9月にかけて元交際相手である男性に対して、拒まれているにもかかわらず携帯電話に1万6300回電話をかけた上に、9月に入ってからは5日間で30回電子メールを送信するというストーカー行為をした疑いが持たれています。
9月27日に名誉毀損の疑いで逮捕されていたところ、ストーカー規制法違反で再逮捕されました。
約半年で1万6300回の電話ということは、1日平均90回電話がかかっていたことになります。尋常な回数ではありません。
このような場合に、ストーカー規制法でどのような対処ができるのでしょうか?
「ストーカー行為等の規制等に関する法律(ストーカー規制法)」という法律があります。これは2000年に施行された法律です。ストーカー規制法の制定の経緯や、詳細な内容についてはこちらをご覧ください。
この「ストーカー行為」の中に、無言電話・連続した電話が挙げられています(法2条1項5号)。
ストーカー行為をされ身体の安全や住居の平穏、行動の自由が著しく害される不安を覚えさせられた(法3条)として、ストーカー行為を受けている人からストーカー行為に係る警告の申出を受けた場合は、警視総監・道府県警察本部長・警察署長(「警察本部長等」と言います。)は、ストーカー行為を行っている者に対して、警告をすることができます。
警告を受けたにもかかわらず、行為を継続する場合には、禁止命令を発することができます(法5条)。この禁止命令に違反してストーカー行為をした者は、1年以下の懲役又は100万円以下の罰金に処される可能性があります。
さらに、2016年5月に音楽活動をしていた女性がファンに襲われた事件を受けて、ストーカー規制法は改正される見込みが高まっています。改正案の主な点は以下のとおりです。
対応の迅速化、厳罰化を主眼とした改正案といえます。
今回のケースでは、男性は2007年から約25回にわたって警察署に相談していて、容疑者は文書と口頭で3回も警告を受けていたそうです。
女性が男性に4年間つきまとったという別のストーカー事件では、裁判記録によれば、ストーカー行為を行った側に「自分の行為がストーカー行為である」といった自覚症状は全く無かったそうです。
ストーカーを行う側の心理としては、警察に警告をされたとしても「何もしていないのに警察に叱られた」と考えてしまう場合も多いと聞きます。
今回のケースがどうだったかは不明ですが、何度も警告されても行為を繰り返していたということは、本人に自覚症状がなかった可能性が高そうです。
仮に改正ストーカー規制法が成立したとしても、今回のようなケースの抑止に直接結びつくものではないかもしれません。
衆議院選挙に立候補したA候補は、街宣でのパワーアップを図ろうと、街宣車両を複数台用意し、それらを連ねて街を走行しながら街頭演説をしようと考えています。
適法でしょうか?
実は、街頭演説の為に用いる車両などの運用方法についても法律での規定があります。
公職選挙法140条では「気勢を張る行為の禁止」として「何人も、選挙運動のため、自動車を連ね又は隊伍を組んで往来する等によつて気勢を張る行為をすることができない」と規定しています。
したがって、設問のように車両を連ねて街を走行するような行為は違法となります。
離婚をすれば、夫婦の一方は自分の子どもと離れて暮らすことになります。子どもと頻繁に会って話したいという思いも募るでしょう。
しかし子どもと暮らす親の方は、子どもを取られるかもしれないと疑心暗鬼になりがちです。面会を拒絶されて、大いに悩むこともあるでしょう。
今回はこうした面会交流について知りたい、トラブルの対処方法や予防方法を知りたいという方のために、役立つ知識を解説しています。
面会交流とは、離婚や別居などが理由で子どもと離れて暮らす親が、子どもと面会を行うことをいいます。直接に会って話をするだけではなく、電話や手紙のやりとりをして交流することも含まれます。
夫婦はさまざまな事情やいきさつが原因で離婚をし、離婚後は全くの他人になります。
しかし子どもとは、実の親子という関係が途切れることはありません。子どもに愛情を注ぐ親ならば、親子の交流を絶やさずに成長を見守りたいと思い、面会を希望するのは当然の感情でしょう。
また何より、面会交流は子どもにとって重要な意味を持ちます。
夫婦の離婚が致し方なかったとしても、子どもが親の離婚や対立を間近で見ていれば、心に不安を抱えたり、離婚に罪悪感をもってしまいがちです。実の親と会えない寂しさも募らせるでしょう。
子どもを安心させ、心身を健全に成長させるためには、面会交流を定期的に行うことがどうしても必要です。
面会交流を子どもの利益のために行うという姿勢は、法律にも明記されています。
かつての民法には、面会交流についての定めがありませんでしたが、2011年の改正で明記されました。
父母が離婚をする際には、親権者や養育費の分担だけでなく、面会交流などの子の監護に必要な事項を決めるときに「子の利益を最も優先して考慮しなければならない」(民法766条1項)と定められています。
ですから、面会交流は親の権利というだけでなく、子どものための権利であるとも言えます。
どれほど離婚の時に対立しても、父母が子どもの利益を何より優先し、面会交流を円満に行うように協力することが大切です。
もちろん、子どもへの虐待があったなどの極端な場合は別として、子どもを監護する親はさしたる理由もなしに拒絶することはできません。
もしも拒絶されて困ったときは、面会交流が子どもの権利でもあると説明し、理解を得るように試みてみましょう。
面会交流は、いつでも無制限に会わせて欲しいなどと、無理な提案をしても、応じてもらえないでしょう。相手に警戒されてトラブルに発展しかねません。
子どもの健康や成長にとって有益になるように、面会交流はこの先何年も続けていく必要があります。円満に続けるためには、父母が話し合い、お互い納得できるようなルールをあらかじめ取り決め、守っていく必要があります。
では、父母の間でどのようなルールを決めれば良いでしょうか。
面会交流を実施するには、子どもの健全な成長がはかれるような配慮が必要です。年齢や性格、新しい生活環境などを考慮し、子ども本人の希望などを聞きながら、過剰な負担をかけないような方法を選ぶべきでしょう。
具体的には、面会交流の日時や頻度、面会時間の長さ、子どもの引き渡し方法、面会の方法(同席者の有無など)について、あらかじめ決めておきます。
面会の時点では、子どもの意向や健康状態などを考慮しながら実施をしていく必要があります。
また、面会交流にあたっての連絡や相談方法、子どもに直接連絡をしても良いか、という点についても、決めておいた方が良いでしょう。
子どもと二人きりになることについて、相手が非常に警戒する場合は、第三者の立会を条件にする方法もあります。
弁護士やNPO、相談機関の手助けも受けられるので、状況に応じてふさわしい方法を選びましょう。
面会交流のルールをいくら話し合っても、相手が頑なだったり、条件が合わずに合意できない事態も考えられます。その時は、家庭裁判所に調停を申立てて話し合いを続けることが可能です(子の監護に関する処分(面会交流)調停)。
調停が不成立になれば自動的に審判手続が開始され、子どもの健全な成長に配慮をしながら、裁判官が審判によって面会交流の是非、条件などを判断します。
申し立てるのは、相手方の住所地又は事前に合意をした場所の家庭裁判所です。
なお、離婚前の別居中でも申立は可能です。離婚の話し合いも併せて行う場合は、通常の離婚調停を申し立てて、面会交流の条件などを決めていきます。
面会交流の方法が決まれば、お互い誠実に守らなければなりません。しかし離婚の時の感情的な対立が激しかったときは、将来面会を拒絶される可能性があります。
こうしたとき、相手に取り決めの内容を守らせるにはどうすれば良いでしょうか。
子どもと同居する親が面会を強く拒絶すれば、子どもは遠慮をして面会したいと口にできないかもしれません。しかし面会を巡って父母が激しく争えば、子どもが心に深い傷を負ってしまいます。将来面会を拒絶されたり、感情的になって非難し合う事態はできるだけ避けたいものです。
そのためには、相手が自主的に約束を履行するように促すことが重要です。
調停離婚や裁判離婚の際に面会交流の取り決めをしていれば、調停調書や判決書などの法的効力のある書類が作成されます。そのプレッシャーによって相手が約束を守るように促すことができます。
しかし協議離婚の場合や、調停の時に面会交流の話し合いを先送りにするなど、裁判所を利用しなかったときは、自ら書類を作成しない限り取り決め内容が証拠に残りません。
後日のトラブルに備えて、単なる口約束にせず、正式な公正証書を作成しておきましょう。
様々な備えをしても、何かと理由をつけて相手が約束を守らない事態も起こります。実際に面会を拒絶されたときには、(1)履行勧告、(2)強制執行、(3)慰謝料請求、(4)親権者の変更、などの解決方法が考えられます。
履行勧告とは、調停や審判で決まったことを相手が守らないときに、家庭裁判所から口頭や書類によって守るように促してもらう手続です。
調停などを行った家庭裁判所に電話で申し込むこともでき、費用も特にかかりません。ただし、裁判所は相手を指導するだけで、手続に強制力はありません。
まずは相手の出方を見たいときに、履行勧告を行った上で説得をすると良いでしょう。
相手が非常に頑なだったり、履行勧告にも従わないときは、強制執行の申立を行う方法があります。
強制執行とは、裁判所の力によって強制的に請求内容を実現する手続をいいます。
ただ面会交流の場合は、執行官がむりやり子どもを連れて来るような直接的な方法(直接強制)は行われません。通常は間接強制という方法で強制執行をいます。
間接強制とは、一定の金銭の支払いを命じて心理的に圧迫することにより、義務を行うよう促す方法です。
面会交流の間接強制を行うには、家庭裁判所に申立てを行います。実際の裁判では面会を1回拒否すると3万円から5万円の支払を命じる場合が多いようです。何度も拒否をすればその都度金額が膨らむので、非常に強い効果があります。
ただ間接強制は強制力が強いので、一定の場合にしか認められません。
裁判所の判例では、面会交流の日時又は頻度、各回の面会時間の長さ、子の引き渡しの方法等が具体的に決められて、相手の義務内容が特定されている場合に、間接強制を行えると判断しています(最高裁平成25年3月28日決定)。
つまり取り決めの内容が調停調書や審判書などで具体的に記載されていなければなりません。調停のときには、間接強制が可能になるくらい具体的かどうかを確認しておく必要があるでしょう。
子どもが拒否しているなどの特別な理由もなく、相手が一方的に面会を拒否したときは、慰謝料を請求することも可能です。
通常の裁判と同じく、地方裁判所に訴訟を提起します。
子どもが面会を希望するのに相手が面会を拒絶したなど、子どもの意思を無視されていては、健やかな成長が望めません。他にも親権者としての資質に疑念が生じることがあれば、子どもを取り戻すことを考える必要があります。
具体的には家庭裁判所で次のいずれかの手続を行い、自分が子どもと暮らしたり、相手の親権を制限して、子どもとの関わりを強めることができます。
子どもの置かれた状況をよく考えながら、ふさわしい手続を選ぶ必要があります。
以上のように、子どもとの面会交流を支障なく行うには、さまざまな方法があります。
しかし法的手段に訴える段階になると、父母は対立が激しくなるあまり、ついつい子どもへの配慮を忘れがちになります。
面会交流は子どもの権利でもあるので、健全な成長にとって必要です。しかし実の父母が感情的な応酬を繰り返していれば、かえって子どもの心を深く傷つけかねません。
法的手段が子どもにとって必要な争いだとしても、面会交流が子どもの成長のために必要であることを忘れずに、冷静な対処に努めるように注意していただきたいと思います。
ボブ・ディランがノーベル文学賞を受賞しました。「え?なぜロックシンガーに」という意見だったり「文学じゃないでしょ?」という声が上がったり。議論百出の様相です。
さて、世界レベルで受賞が報じられるものと言えば、「ノーベル賞」あるいは数学の世界で言えば「フィールズ賞」など様々なものがあります。国内に視線を転じれば、国民栄誉賞。ちょっと毛色は異なりますが勲章の叙勲などが挙げられます。
実は国民栄誉賞や叙勲など、国が一国民、あるいは団体に栄典の授与を行うことは憲法上の問題があるという指摘があります。
というのも、国の行為(行政府が行う行為)については、法律上の根拠が必要だとされます。しかしながら、前述の叙勲制度を含む栄典制度は根拠となる法律が存在しません。
内閣府令や内閣告示などの「政令」に基づいて運用がなされています。これを捉えて、「政令はあるけれども法律に基づかないのだから、栄典授与は憲法違反となる」とする見解です。
これに対して政府見解としては、憲法73条6号が政令制定権を内閣の権限として定めていることを根拠として、憲法7条において規定される「栄典を授与すること」を実施するために政令の制定を行い、栄典の授与を行っているから憲法違反ではないとしています。
また、行政の行為は基本的に国民の権利を「制約」するものであり、それゆえに権利の制約を適切に行い、暴走を食い止めるために法律の根拠を必要とするわけですが、栄典の授与は国民の権利に制約をもたらすものではなく、むしろ利益をもたらすものだから、法律の根拠は要しないという実質にまで踏み込んだ見解もあります。
結局のところ、憲法上の「学問的」問題点はあるものの、実務上は問題なく栄典の授与がなされている状態です。
もっともノーベル賞は海外の主催機関が受賞者を選定し賞を与えるものですから、憲法上の問題云々は関係ありません。
それこそ、せっかくの受賞について「憲法上の問題がある!」と議論をしていたら、ボブ・ディランに「The answer is blowin' in the wind(その答えは風に吹かれて。わからないままさ)」と言われそうですね。
2016年10月下旬時点では、ノーベル賞の主催者側がボブ・ディランに幾度となくコンタクトを試みるも、返答がないという状況。「ノーベル賞なんてロックには関係ないさ」と言わんばかりの態度に、かっこよさ、ボブ・ディランらしさを感じてなりません。
何かの商店でお金を支払い、物を購入するのは「売買」として契約であるというのは広く知られています。
では、物々交換(金銭以外)は民法上契約であるとされるでしょうか?
民法586条において、「交換」についての規定があり、当事者の合意によって、金銭の所有権以外の財産権の移転を約することを交換契約であるとしています。
そのため、いわゆる物々交換も純然たる契約として扱われます。
大手広告代理店の電通で入社間もない女性社員が業務量の負担を苦に、自殺を図るという事件がありました。自殺を図る直前の残業時間はなんと100時間を超えるものとされています。
これを受けて、電通には労働監督基準局が臨検を行うなどし、重い行政処分がくだされるのではないかと見られています。
なぜ、そのような異常な残業時間が続いたのかは、行政のチェックが待たれるところですが、残された遺族にはどのような法的対応策があるでしょうか?
まず、報道などでよく目にする「過労死」は、法律上の言葉ではなく、「こうした基準に当てはまれば過労死と呼ばれる」あるいは「過労死にあてはまるから、ただちにこうした法的手続きが取れる」ということはなく、既存の法令に照らして法的対応を検討することになります。
遺族側からの対応としては、刑事処分を求めたいと考えることもあるかと思いますが、正直に言ってあまり実効性がないのが残念な部分です。
例えば、捜査機関に対して「業務上過失致死傷罪(刑法211条)」や「労働基準法違反(具体的には労働基準法32条違反)」であると告発するということが考えられます。
もっとも、告発したからといって、捜査機関が捜査を開始するかはわからない部分があり、仮に処罰されたとしてもせいぜい罰金刑。しかも金額は数十万円レベルと、命の重さとは全く釣り合わない内容となっています。
したがって、「それでも一矢報いたい。法的に罰してほしい」という遺族側の心情があれば検討するという手段といえます。
一方、民事についてはどうでしょうか?
この点、企業側に労働者への安全配慮義務違反(労働契約法5条など)があるとして、債務不履行を理由とする損害賠償請求を行う(民法415条)か、企業が劣悪な労働環境を放置し、それが不法行為を構成するとして不法行為に基づく損害賠償請求を行うこと(民法709条)が考えられます。
本来的には、上記の2つの請求は被害者である労働者本人が行うものですが、請求権は相続によって遺族が引き継ぐことになるため、遺族から企業側への請求が可能になります。
上記の2つの手法は、手法の違いこそあれ、実際に請求できる費用項目は同じです。
過労死のようなケースでは、逸失利益として、労働者が将来得られるはずであった収入。被害者が死亡したことでの精神的苦痛を償う慰謝料。葬儀費用などが項目として挙げられます。
通常、こうした損害賠償請求においては、加害者側の行為から被害が生じたことを立証していく上で、さまざまな証拠収集活動が必要になります。
しかし、過労死のケースであれば、労災の申請をし、それが認定されることで一定程度の証拠収集が可能であるとの特徴があります。
例えば、会社が主張する残業時間と被害者が主張する残業時間に差があった場合なども、労災認定の段階で実質的な残業時間を確定させたりします。また、長時間労働と自殺との関係性についての証拠も得られることになります。
罰金で数十万円の支払いを迫るよりも、多額の賠償金を支払う方が企業にとっては痛手となります。
加えて、残された家族の今後の生活にも資するということから、過労死事件においては損害賠償請求が法的対応の主軸となっているのが実情です。
甲は乙に対して、「小学校に入れば時計をあげるよ」と約束し(事例I)、丙は丁に対して「大学に入れば時計をあげるよ」と約束しました(事例II)。
これは条件でしょうか、期限でしょうか?
条件とは、契約などの法律行為の効力発生を、将来の未確定な事実の成否にかかわらせる、この未確定の事実をいいます。
これに対して、期限とは、契約などの法律行為の効力発生を、将来必ず到来する事実の成否にかかわらせる、この事実をいいます。
甲乙間の贈与契約は、小学校入学という事実に成否をかかわらせていますが、小学校入学は義務教育の下、必ず到来する事実であるといえますから、これは期限となります。
これに対して、丙丁間の贈与契約は、大学入学という事実に成否をかかわらせていますが、大学入学はその事実が必ず発生するものではなく(大学に進学しない人もいます)、したがって、これは将来の未確定な事実であって条件となります。