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受刑者と性同一性障害 1

~刑務所内で性同一性障害の治療は受けられる?~

 法務省によれば、2011年末現在で医師から性同一性障害と診断されたり、同様の傾向がみられたりした受刑者は全国で約40人。

 従来は、こうした性同一性障害の受刑者であっても通常の受刑者と一律に扱ってきました。
 刑務所で個別の要望に応じれば受刑者間に不満や差別が生じるおそれがあるからです。

 しかし近年になって、性同一性障害が社会的に認知されるようになり、一律の処遇を施すことは障害を無視した人権侵害であるとの批判が目立ち始めました。
 そこで、法務省は、2011年6月に処遇に関する新指針を通知したのです。

■医療面

 受刑者に「性同一性障害かどうかの診断」や「ホルモン療法」等の医療措置を受けさせることは、基本的に国の責務の範囲外だと考えられています。
 つまり、このような措置は通常必要ないということです(刑事収容施設及び被収容者等の処遇に関する法律56条)。

 その理由としては、性同一性障害の診断にしろホルモン療法にしろ、それが受けられなくても、収容生活上、すぐに取り返しのつかないような損害が生じるとは考えにくい点が挙げられています。
 また、性同一性障害の診断(診断を行えるだけの知識や経験をもつ2人以上の医師が必要)も、ホルモン療法のような積極的な身体的治療も、極めて専門的な領域に属する問題なので、医師の確保などが難しい刑事施設内では、物理的に限界があります。

 加えて、性同一性障害の診断については、「拘禁中」という極めて特殊な環境下で診断を実施することの妥当性にも疑問があるようです。
 なお、性同一性障害の疑いがある者に対して処遇上の配慮を行うかどうか検討するために診察を行う場合など、必要と認められる範囲で精神科医師による診察を実施することは問題ありません。

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