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現住建造物等放火

~最高裁平成元年7月7日 第二小法廷決定~

 普段何気なく利用しているマンションのエレベーター。
 人が乗るかご部分は燃えにくい素材でできており、解体せずとも取り外し可能な構造だとご存知でしたか?この中で住むわけでも活動するわけでもありませんし、マンションと一体の物件といえるかは微妙なところです。
 今回の事案では、このようなエレベーターへの放火でも、「現住建造物等」放火罪にあたるのかが問題となりました。

 場所は、99名が住む鉄骨鉄筋コンクリート造陸屋根12階建てマンション。
 そのエレベーター内でAは、ライターを取り出し、新聞紙等に点火して、エレベーターのかごの床上に投げつけました。そこにはガソリンのしみ込んだ新聞紙を置いており、火は瞬く間に燃え上がります。この時Aには、「エレベーターのかごに燃え移るかもしれない」との認識がありました。結局、火はエレベーターのかごの側壁に燃え移り、その南側側壁の化粧鋼板表面の化粧シートの一部が焼失しました。
 Aは現住建造物放火罪に問われ、札幌高等裁判所は、昭和63年9月8日、同罪の成立を認める判決を下しました。(以後、原判決と呼ぶ)

 弁護人は、放火罪の対象となる物件について、それ自体が人の生活に適した構造をしているか、もしくは壊さなければ取り外せないほど家屋と一体化している必要があると従来の判例は判断している(最高裁昭和25年12月14日判決)ところ、居住空間でもなく、壊さずに取り外せるエレベーターのかごを建造物の一部であるとした原判決は、これに反しているとし、本件を上告しました。

 最高裁判所は、弁護人の主張は適法な上告理由に当たらないとして上告を棄却したうえで、「なお書き」で次のように述べています。
 なお、1,2審判決の認定によれば、被告人は、12階建集合住宅である本件マンション内部に設置されたエレベーターのかご内で火を放ち、その側壁として使用されている化粧鋼板の表面約0.3平方メートルを燃焼させたというのであるから、現住建造物等放火罪が成立するとした原審の判断は正当である。」
 被害物件と家屋との一体性を検討する際、保護の対象を、壊さなくては取り外せない物件に限らず、ボルトやナットによる連結といった近時の建築技法を考え、毀損に準じた場合も含めて判断した原判決の内容を指示したといえます。

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