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社交儀礼と賄賂罪

~最高裁昭和50年4月24日第一小法廷判決~

 謝礼を受け取る。
  日常何気なく行っているこんな行為も、あなたが公務員なら注意が必要です。
  公務員は、その職務に関して賄賂を受け取ったり、要求したり、約束したりしてはならないという単純収賄罪197条1項)が規定されているからです。ただし、職務と引き換えでなかったり、得られる価値が比較的軽微な場合は、社会儀礼の範囲内として賄賂罪にあたらないとされています。
  以下の事例では、謝礼の受領がこの社会儀礼の範囲内にあるかが争われました。

 被告人Xは国立大学教育学部付属中学校の教諭、つまり公務員でした。
  その教育スタイルは、保護者からの特別な依頼や要望に応え、深夜の宿直や私生活の時間を割いて学習指導を行ったり、生徒の自宅を訪問し、家庭教師と指導方針を打ち合わせたりと、学習面・生活面にわたるとても熱心なもの。
  こうした指導の謝礼として、Xは、昭和41年4月下旬頃、新しく学級担任になった生徒Aの母親から、額面5000円の贈答用小切手1通を受け取りました。
  また、昭和43年3月下旬頃には、それまで2年間にわたり学級担任として教育指導を担当してきた生徒Bの母親、および生徒Cの父親からも、教育上好意ある指導を受けた謝礼として、それぞれ額面1万円の贈答用小切手を受け取りました。
  5000円や1万円といった額は、Xの当時の給与(月額約3万3000円)を考えると、かなり大きいものでした。
  こうした事実につき、Xは単純収賄罪で起訴されたのです。
  一審、二審(以下原審という)は上記の謝礼を社会儀礼の範囲外と判断。賄賂として有罪を認めました。
  一方、最高裁は、Xの上告を棄却し、事実誤認があり、審理が不十分として原審に差し戻しました。判断の基準となったのは、儀礼的挨拶の限度を超えて、他の生徒以上の教育指導を期待して供与したと疑うに足る特別の事情があるか否かでした。
  本件の場合、新しく学級担任の地位についたXへの、保護者からの慣例的社交儀礼と考える余地があり、過去の贈答状況や金額、他の教諭との比較等を総合して、公務員としてXが行うべき教育職務そのものへの謝礼であるとは断ずることが出来ないと考えました。
  また、Xの行為は職務行為というよりも、生徒に対するいわば私的な人間的情愛と教育に対する格別の熱情の発露とみることができ、それに対する保護者の感謝と、敬慕の念からくる儀礼と考えうると結論付けてのことでした。

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