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条件付故意

~最高裁昭和59年3月6日第三小法廷~

 犯罪遂行の意思は固まっていても、一定の条件下でなければ発動しない、そんな意思を条件付故意といいます。たとえば、「抵抗したら殺す」等。
  条件が付いている分、はじめから「殺す」と考えるような通常の故意とは少し違って見えますが、犯行の意思が確定的でありさえすれば、条件付故意でも通常の故意と同様に捉え、発生した結果の責任を問うこととなります。
  今回の事案で問題となったのは、この「犯行の意思が確定的か」という点でした。

 被害者Aとの間に、賭場開張資金の返済をめぐりトラブルを抱えていた被告人。暴行や脅迫等の手段に頼ってでもこれを解決したいと考え、Aを連行して話をつけようと企てました。共に計画を練ったのは、X、Y、Zの3人です。
  この時、被告人は、状況によってはXらがAを殺害しかねないとの認識を持っていました。
  昭和55年2月8日の夕刻、被告人らは大阪市内の喫茶店でAを連れ出し、用意した車に乗るよう求めました。ところが、Aは応じません。
  暴れるAに苛立ったX、Yは、所持していた刺身包丁でAの左胸等をめった突きにし、車の後部座席へ押し込みました。さらに車内でも、Zの指示を受けたYが同包丁でAの右大腿部を数回突き刺し、Aは失血死してしまいます。
  この間、被告人は直接手を下してはいませんが、XらにA乗車や発車を急かした上、車中でのAへの傷害行為も制止せず、その後も何ら救護措置をとることはありませんでした。

 原審の大阪高裁は、A殺害の実行がAの抵抗という条件発生にかかっていたにせよ、指揮者の地位にあった被告人が、犯行現場で事態の進展をX、Y、Zの行動に委ねた時点で、犯行の意思は確定していたと判断。
  「殺人の結果が起ころうと構わない」という未必の故意(故意の一種で、原則通常の故意と同じ扱いがなされる)があると認定しました。
  なお、本件では、他の者と共謀して犯罪を遂行し、被告人本人は直接に手を下していません。このような場合でも、故意が認定されれば、共謀内容の範囲で生じた結果につき自らの犯罪として遂行したものと考えます(いわゆる「共謀共同正犯」)。こうした判断から、本件では被告人にも殺人の共同正犯が成立するのです。
  これに対し、被告人側は、Xらによる突然の殺害計画実行により、被告人の殺害実行の意思は確定的とはいえない状態で、殺人の故意はなかったと主張、上告しました。
  しかし、最高裁は、原審の判断に誤りなしとして上告を棄却。原審同様の理論構成で条件付故意・未必の故意成立を肯定し、殺人の共謀共同正犯を適用しました。

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